30年度の研究実績としては、過去の研究業績をまとめた単行本、査読論文、博士論文等計7本の書籍・論文を発表している。また、地域社会学会、関東都市学会、関東社会学会、地区防災計画学会等で、計7回の学会報告を行った。 その中では、報告者の身近にある地区防災計画づくりの事例やモデル事業の対象となったいくつかの事例を踏まえて考察を行った。また、参与観察と組み合わせて、日中の地域コミュニティの関係者約20人に対する半構造化面接法によるインタビュー調査によってデータ収集を行った。 収集したデータの分析に当たっては、最近日本で開発された新しい質的な分析手法であるSCAT(Steps for Coding and Theorization)及び客観的科学的な計量テキスト分析手法である共起ネットワーク分析・頻出語分析を併用して分析を行った。 また、報告者が一番頻繁に参与観察を行った北九州市小倉南区志井校区の事例を起点として、以前から報告者が研究対象としてきたマンションのコミュニティを含む内閣府のいくつかのモデル地区と比較しつつ、最終的に報告者の出身地である中国重慶市の一般の社区(防災模範社区)及びマンションの社区の事例と比較した。なお、比較に当たっては、各事例を、対象範囲が校区(一般の社区)かマンションか、被災経験があるかないか、モデル地区か否か、の3つの区分から類型化した。 上記の結果、日中の都市コミュニティにおける地区防災計画づくりの分析を通じて、本研究で紹介した地区防災計画づくりに取り組んでいる地区では、専門的な知識を有する住民のリーダーのほか、学識経験者、行政関係者、NPO等の外部資源が防災活動の活性化のための重要な要素となっていることが判明した。
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