人間行動,特に中心市街地における歩行者行動の研究について,洗練化を図った.人々の活動需要分布は都市形成に影響を与え,また形成された都市空間から影響を受けるという空間との相互作用の関係にあり,空間変容モデルを構築する上でのインプットとなる.具体的には,従前の経路選択モデルを時空間ネットワーク上の活動経路選択モデルへ拡張させることで,歩行者のスケジューリングパタンを分析可能とするだけでなく,ネットワーク上の時間的・空間的活動需要分布を評価可能な枠組みを構築し,洗練させた.また,都市空間のマネジメントについて,多目的最適化理論を援用しながら方策提案を試みた.ネットワーク上の活動需要分布モデルを下敷きとし,都市空間政策を評価するためのネットワークデザイン問題を定式化した.街路空間再配分政策の目標として地区の総滞在時間あるいは期待効用を最大化させることを考え,一方で投資額は可能な限り抑えたいというトレードオフの関係にある課題を,多目的最適化問題として提示した.結果として,目的関数の選択に応じた投資すべき街路の配置パタンの違いが明らかとなり,商店街・百貨店・地区のエントリーポイント等の間の接続方策についての示唆を得た. 上述の成果については,国際会議で発表され科学的な議論を行うとともに,多様な分野の5本の審査付き学術誌論文(都市計画論文集,土木学会論文集×2,交通工学論文集,Transportation Research Part C)として出版が決定している. また,利用者の需要モデルと同時に,空間変容を扱う土地利用の推移に関する研究について構想・計画を進めた.
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