研究課題/領域番号 |
17J10021
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中村 優吾 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | Internet of Things / Edge Computing / Quality of Service / 分散処理 / ミドルウェア |
研究実績の概要 |
本研究では,データの発生源に存在するIoTデバイス群の計算資源を有効活用することによって,クラウドレスかつ実時間で多種多様なIoTデータ流を価値化する分散処理基盤の実現を目指している. 平成30年度は,(a)サービス需要の変化に応じて,動的に計算資源を割り当てるためのメカニズム,(b)データの発生源に存在する計算リソース群の状況に応じて,動的に処理タスクを分散実行するメカニズム,(c)分散処理基盤上で動作する具体的なタスクグラフの構築という研究課題に着手した. 課題aに関して,サービス需要の変化(サービスを利用するユーザの増減)を予測しながら,要求されたQoS要求(レイテンシ)を満足するように,対象エリア内に存在する利用可能なエッジIoTデバイスの計算資源を適応的に割り当てる“適応的リソース確保”というメカニズムを提案した. 課題bに関して,利用可能なエッジIoTクラスタに属するデバイスの計算能力がそれぞれどれくらい偏っているのかに応じて,適応的に処理タスクを分割して分散実行する“適応的タスク分割”というメカニズムを提案した. これらの成果をまとめた論文は,エッジコンピューティング分野の主要国際会議であるThe Third ACM/IEEE Symposium on Edge Computing (SEC2018)に採録された. 課題cに関して,IoT/ウェアラブルデバイスを用いた行動認識サービスを題材として,スマートフォンに標準搭載されている加速度・ジャイロ等のセンサから得られるセンサデータを解析処理し,ユーザの日常生活行動を高精度に認識するタスクグラフを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,当初の計画通り,IoTデータ流を実時間で価値化する分散処理基盤の実現に向けて,(a)サービス需要の変化に応じて,動的に計算資源を割り当てるためのメカニズム,(b)データの発生源に存在する計算リソース群の状況に応じて,動的に処理タスクを分散実行するメカニズム,(c)分散処理基盤上で動作する具体的なタスクグラフの構築という研究課題に取り組むことが出来た.また,上記に関わる成果として,学会発表4件(国内学会1件,国際学会3件)を得ることが出来た. 以上より,2年目として順調な進展が得られたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通りに進めていくことを予定している.提案する分散処理基盤を完成させるとともに,基盤上で動作する応用アプリケーションの構築を進める.そして,数十台のIoTデバイスを用いた実証実験により, 地産地処的アプローチの有効性を明らかにする.具体的には,課題a,bで検討したメカニズムを,現在実装を進めている実機用の分散処理フレームワークに統合し,提案する分散処理基盤の完成を目指す.次に,課題cの成果を元に,ユーザのスマートフォンやウェアラブルデバイスといったIoTデバイスからの生センサデータ流を実時間で解析処理し,ユーザが今何をしているのかを表すコンテキストデータ流を低遅延で提供するコンテキストアウェアアプリケーションの実現を目指す.そして,数十台規模のIoTデバイスを用いた実証実験により,実時間性やスケーラビリティ,提供コンテンツの品質といった評価基準のもと,地産地処的アプローチの有効性を評価する.最後に,これまでの研究活動によって得られた成果を国内会議や国際会議発表で発表するとともに,論文にまとめる予定である.
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