研究課題/領域番号 |
17J10039
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
磯貝 桂介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 激変星 / 矮新星 / 降着円盤 / 観測 / 可視光 / 国際協力 |
研究実績の概要 |
当研究課題の目的は、連星進化理論の検証と、降着円盤不安定性の物理機構の解明である。国際協力による可視測光観測により、矮新星アウトバーストを詳細に観測することで研究を進める。観測対象としては、特に発見数・観測数が非常に少ないことで知られるヘリウム激変星に力を入れ、これまで知られていなかった現象や進化経路の解明を目指す。2017年度の研究実績は以下の通りである。 (1) 矮新星OV Bootisのアウトバーストの国際協力観測を行った。OV Bootisは宇宙初期に生まれたpopulation IIと呼ばれる世代の連星で、星内部の金属量が少ないことで知られる。今回、星団に所属しないpopulation IIの連星として、世界初のスーパーアウトバーストが発見された。世界の研究機関の中でも最も早く重要天体のアウトバーストに気が付き、メーリングリストを通じて観測指揮を行った結果、世界中60ヶ所以上の観測地点による歴史的な規模の観測に成功した。連続分光観測や同時多色観測など豊富なデータがあるため、解析結果は分割して論文化していく予定である。第一報として、光度変動にのみ着目した内容の論文を準備中であるが、これには第二著者として参加している。 (2) Texas A&M University-Commerceに滞在し、Matt Wood教授と共同研究を行っている。SPHシミュレーションにより円盤不安定性を再現し、再増光と呼ばれる変動現象の再現を目指す。再増光は発生機構が未だ分かっておらず、この研究はひとつの解決策を提案するものである。 (3) その他、多くの激変星の観測を行った。それらについて順次、主著または共著の形で論文化していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くの観測キャンペーンに成功し、前例のない観測データが複数得られた点は計画以上の進展と言って差し支えない。成果の一部は国内外の会議で既に発表しており、順次論文化を進めていく予定である。また、共同研究によって、SPHシミュレーションや降着円盤の幾何構造マッピングといった、新たな研究ツールを習得中である。これらは今後の研究の進展に大いに役立つものである。 一方で、本研究の最重要観測対象であるヘリウム激変星については、大きな観測キャンペーンを行える規模の現象が発見されなかった。研究対象が自然現象である以上仕方がないため、来年度の成果に期待する。
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今後の研究の推進方策 |
以下のように、(1)既存のデータを使った解析手法の確立・論文化、(2)新たな装置を利用した観測、の2つで研究を進めていく。 (1) ヘリウム激変星をはじめとした、過去の観測結果について論文化を進める。解析の一部は、Texas A&M University-CommerceのMatt Wood教授や広島大学 植村誠准教授との共同研究によって既に開始している。 (2) 2018年度から稼働する京都大学3.8mせいめい望遠鏡を利用し、これまでの望遠鏡では不可能だった詳細な観測を行う。せいめい望遠鏡は突発現象のToO観測をサイエンスの柱の1つとして掲げており、本研究課題と非常に相性が良い。具体的には、これまで日本にあった望遠鏡の口径では不可能な、暗い天体の連続分光観測を行う。これにより、再増光と呼ばれる現象の光源が、円盤のどの部分なのかが明らかになり、増光機構の解明につながる。また、Tomo-e Gozenプロジェクトによる広視野・高速サーベイカメラも2018年度に稼働し、突発現象の立ち上がりをいち早く知ることが出来るようになる。2つの新装置を利用することで、円盤不安定性の成長段階の観測が可能になると予想される。
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