研究実績の概要 |
本研究では,飼育幼生サンゴ骨格, 無機炭酸塩合成と自然環境下で生息しているサンゴ骨格の凝集同位体比であるΔ47を利用して, 新規淡水流入量代替指標の開発を行うことを目的としている.また,開発した淡水流入量換算式は,人為的な栄養塩流出がサンゴに与えてきた影響を明らかにする研究に応用する. H29年度は, 1)幼生サンゴの飼育実験は共生藻保有の有・無に分けたAcropora digitiferaとAcropora tenuisを用い, 3つの恒温槽(26, 28, 30℃)で2週間程度飼育した. 2)炭酸カルシウム合成実験は, 温度の異なる恒温槽で人工海水にアミンを添加することで炭酸カルシウムを合成することに成功した. 1)と2)では,Δ47を計測出来る十分な試料量が入手できた.3)淡水流入の度合が異なる海域で採取したパラオ産サンゴコアを入手し, δ18O・微量元素計測を実施した.δ18Oと微量元素計測結果から,本サンゴ骨格は淡水流入の影響を受けている可能性を示唆する結果を得た. 4)人為的な土地開発による栄養塩汚染が少ない,淡水流入があるなど,様々な条件海域でサンゴ試料を採取するため, 南西諸島で研究対象試料の現地探索を行い,試料採取の手続きを開始した. また, 完新世の離水サンゴ礁の北限地域であるトカラ列島中之島で現生・化石サンゴ試料の採取に成功し, 放射性炭素年代測定を実施した. 5)過去のサンゴ礁のリン汚染を復元するため, 代替指標であるサンゴ骨格のリンの計測手法開発に着手した. H30年度に実施した繰越事業においては, 南西諸島で採取したサンゴ試料の一部について,δ18Oを計測した.
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