本研究では、金属イオンと有機配位子の佳境により作られる金属有機構造体(MOF)を、粒径数nmの金属ナノ粒子に被覆させることで得られる複合体、ナノ粒子@MOFを作製し、金属ナノ粒子の物性、特に触媒反応性制御を実現することである。 昨年度までに、4d遷移金属であるPdおよびRhの表面にMOFの一種UiO-66を被覆した複合体、Pd@UiO-66、Rh@UiO-66を合成し、それぞれCO酸化、CO水素化反応に関する触媒活性の向上を確認した。この結果に基づき、本年度は、昨年度までに合成した複合体に関する研究をまとめるための解析実験を中心的に行なった。 高いCO水素化反応活性を示したRh@UiO-66の活性向上の原因を調べるために、in-situの赤外分光測定を行なった。その結果、複合化していないRhナノ粒子と比較して、Rh@UiO-66ではナノ粒子表面へのCO吸着力が弱くなっていることが判明した。加えて、quasi in-situのX線光電子分光測定の結果、Rhの酸化が進行していることが判明した。以上の結果から、MOFの被覆に伴いRhナノ粒子の表面電子状態が変化することで、COの吸着力が低下しナノ粒子表面を拡散しやすくなることで水素化活性が向上したと考えられる。 また、高いCO酸化活性を示したPd@UiO-66についても活性向上の原因を解明するためにin-situの赤外分光測定を行った。その結果、MOF被覆を行っていないPdナノ粒子と比較して、Pd@UiO-66では反応物のCOがPd表面上でより反応性の高い吸着状態になっていることを明らかにした。この結果を国際学術誌のChemical Communicationsに投稿し、雑誌表紙のカバーアートとして採択された。
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