心筋細胞は心臓自体の拍動というメカノストレスを常時受けていること、AMPKが局在する介在板は心臓でのメカノセンシングの場であることから、心臓でのAMPK活性がメカノストレスにより制御されているという仮説を立てた。この仮説を検証するため、これまでに拍動阻害剤MYK-461(MYK)により拍動を抑制した新生仔ラット心筋細胞を用いた実験を行い、細胞接着部位(介在板)へのAMPKの局在が心筋拍動によるメカノストレスによって制御されていることを明らかにしてきた。 さらに、MYK処理により拍動を抑制した心筋細胞を観察する中で、生理的な表現型として個々の細胞面積が拡大している可能性を見出した。そこで、心筋細胞においてAMPK-CLIPシグナルが微小管の動的不安定性を調節することで細胞の形を制御していると仮説を立て、さらなる検討を行った。その結果、MYK処理により心筋細胞の細胞面積の有意な増加を認めた。さらに、この現象におけるAMPKによるCLIPの311番目のリン酸化の意義を検証するため、CLIP WT、CLIP S311A、及びCLIP S311Dを導入した心筋細胞において表現型を比較した。CLIP WTを発現させた心筋細胞では、拍動阻害により細胞面積が増加した。また、CLIP S311Aを発現させた心筋細胞は、MYKを処理せずとも細胞面積の増大が見られた。一方、CLIP S311Dを発現させた心筋細胞では、MYK処理による細胞面積の拡大が抑えられた。これらの結果から、細胞接着部位へのAMPKの局在およびAMPKによるCLIPのリン酸化が適切な細胞の大きさを保つために重要であり、AMPKがメカノセンシングの機能因子である可能性が示唆された。 また、MYKを4時間処理した心筋細胞において、Controlと比較して微小管の構成分子であるα-Tubulinが増加していることを見出した。
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