研究課題/領域番号 |
17J10192
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
大内 一輝 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | SMA / アストロサイト / Notchシグナル / 治療薬の開発 |
研究実績の概要 |
SMAは先天的な神経変性疾患であるにも関わらず、発生段階に注目した研究報告は少ない。申請者らはNotchシグナルに着目した治療標的の提案を目指して研究を進めている。 まず、SMAマウス病態期 (生後11日目) におけるアストロサイトの増加に関する検討を行うため、GFAP陽性アストロサイトの増加が確認された。興味深いことに、灰白質特異的にGFAP陽性アストロサイトの増加が認められた。また、GFAP以外のアストロサイトのマーカーである、S100の増加が脊髄中心管付近で認められた。 アストロサイトの増加にはNotchシグナルの活性化の寄与が考えられる。そこで、病態期 (生後11日目) 及び発症期 (生後5日目) におけるNotchシグナルの活性化を検討したところ、Notch及び下流因子のp-STAT3及びGFAP/S100 (アストロサイトマーカー) がいずれも発症期で増加していた。 さらに、ヒトでもNotchシグナルの活性化が認められるかを検討するため、SMA患者由来iPS細胞から運動神経細胞を作製し、健常者由来iPS細胞 (201B7) と比較し、Notchシグナルの活性化を検討した。その結果、患者iPS細胞由来の初期の培養系においても、Notch陽性細胞が増加していた。 最後に、SMA病態下においてアストロサイトが実際に運動神経変性に直接的に寄与しているかどうかを示すための以下の実験を行った。まず、患者iPS細胞からアストロサイトを分化させ、培養上清を回収した。さらに、回収した培養上清をマウス運動神経細胞株である、NSC-34に暴露し、細胞死をPI (propidium iodide) で評価した。その結果、患者iPS細胞由来の培養上清は細胞死を誘発した。さらに、アストロサイトから分泌される代表的な神経障害性因子であるIL-1βの発現量がSMA患者由来培養上清で増加していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は次項に記載したように、アストロサイトの脊髄性筋萎縮症 (SMA) への関与をSMAモデルマウス及び患者iPS細胞を用いたin vitro SMA モデルを使用して検討した。その結果、病態下でSMN遺伝子がノックアウトされると、GFAP陽性細胞が特に脊髄灰白質で増加することが認められた。さらに、アストロサイトの分化及び増殖を制御するNotchシグナルに着目したところ、SMAモデルマウスにおける発症期及び病態期でNotchシグナルの活性化が認められた。すなわち、SMA病態下でNotchシグナルの活性化を介して、アストロサイトの分化及び増殖が亢進している可能性が示唆された。さらに、SMN欠損アストロサイトが実際に運動神経変性に寄与することを認めた。これらの結果には当初予定していなかった内容も含んでいるが、一年を通して期待通りの研究の進展が認められた。来年度は、実際にNotchシグナル阻害剤を用いてSMAモデルマウスに対する生存期間に対する作用、各種運動機能評価 (正向反射テスト、傾斜板テスト) を検討していく予定である。更にNotch阻害剤がSMA病態におけるSMN欠損アストロサイトの増殖を抑制するかどうかを検討する。
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今後の研究の推進方策 |
1.SMAモデルマウスに対してγ-セクレターゼ阻害剤を投与し、延命効果、体重変化および各種運動機能評価 (正向反射テスト、傾斜板法、崖回避テスト) のスコア改善に関する検討を行う。 2. γ-セクレターゼ阻害剤投与群において、病態後期 (生後11日目) のSMAモデルマウス脊髄における神経細胞/アストロサイト数の増減などに関する検討を行う。 3.GFAP陽性アストロサイトが増殖性マーカーを発現しているのか、それとも分化が完了した成熟アストロサイトであるかを、増殖性マーカーであるKi67などを用いて検討する。
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