研究課題/領域番号 |
17J10201
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 智裕 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 縮環シクロブテン / 4π電子環状反応 / cis,trans-シクロアルカジエン / trans-シクロアルケン / 面性不斉 / 不斉転写 / 中員環 / 環拡大反応 |
研究実績の概要 |
縮環シクロブテンは4π電子環状反応によりcis,trans-シクロアルカジエンを平衡混合物として与えることが判明している。一昨年度の研究では、4π電子環状反応により生じると考えられる微量のcis,trans-シクロアルカジエンのcis二重結合を化学選択的に反応させることで電子環状反応を非平衡化し、trans-シクロアルケンの合成に成功した。またtrans-シクロアルケンの不斉合成法は極限定的であるが、縮環シクロブテンの中心性不斉から面性不斉への不斉転写反応にも成功し、新たな合成法の提示に至った。 昨年度はこれらの知見を利用し、面性不斉の認識に基づくcis,trans-シクロアルカジエンの(動的)速度論的光学分割法の開発に着手した。単純な面性不斉化合物であるtrans-シクロアルケンはこれまで合成例も限られていたことから、その面性不斉を認識した反応は実現されていない。不斉配位子を有するパラジウム触媒の存在下、以前開発したHeck反応に付したところ、面性不斉の認識は行われなかった。そこで、Heck反応の遷移状態(面性不斉の認識が発現する時点)を熱的に安定化させる目的で、反応を低温下で起こせる条件の探索を行った。これにより、Heck型の反応が室温下進行する条件を見出した。結果的に面性不斉認識はHeck反応の系では難しかったものの、これまで熱を必要としていた縮環シクロブテンの反応が室温で行えることに着目し、これまで想定のみがなされていたcis,trans-シクロアルカジエンを実際に錯体して単離することに成功した。 また、異なる骨格を有する縮環シクロブテンの電子環状反応を利用した拡大反応の開発にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
面性不斉の認識に基づくcis,trans-シクロアルカジエンの(動的)速度論的光学分割法の開発においては、目的とする反応を満足いく形で達成することは出来なかったものの今後の進展が期待できる知見や新たな反応開発に成功した。具体的には、1.これまで加熱条件下においてのみ反応が行えていた縮環シクロブテンを室温下で反応させることに成功した、2.また、本知見を基に中間体であるcis,trans-シクロアルカジエンを錯体として単離することにも成功した。3.redox-relay型のHeck反応を採用することで以前報告したHeck型不斉転写反応の適用範囲を拡大させることに成功した。 以上の戦略は異なる骨格を有する縮環シクロブテンにも有効であった。イナミド及びイミンを用いた[2+2]環化付加反応により生じた縮環シクロブテンは連続的に開環反応を起こし、新奇な中員環構造の構築に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度中間体としてcis,trans-シクロアルカジエンを単離することに成功している。そこで、縮環シクロブテン及びcis,trans-シクロアルカジエンの平衡反応を詳細に解析する。これにより、物理化学的パラメータを算出、また計算化学によるその裏付けを行うことで、今後の発展に寄与するであろう理解の深化を図る。 縮環シクロブテンを用いた一連の反応開発は、不斉転写を行える点で意義深いが、縮環シクロブテンそのものの不斉合成は未だに困難であることが知られており、その方法論も限られている。本研究をより進展させるにあたり、縮環シクロブテンの不斉合成は急務であると考えている。そこで、縮環シクロブテンの不斉合成法の開発も行うこととした。
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