研究課題/領域番号 |
17J10261
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
下田 和 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 領域分割 / 深層学習 / 弱教師あり学習 |
研究実績の概要 |
深層学習における領域分割の教師情報のコスト削減のために、「深層学習を用いた弱教師あり学習による画像に対する物体位置推定」についての研究を行った。これまでは、弱教師情報を用いてクラス分類のための深層学習モデルを学習し、これのクラス分類に寄与した領域を可視化することで弱教師あり領域分割を行ってきた。しかし、近年は事前に仮の物体領域を推定し、これを用いて直接領域分割のための深層学習モデルを学習するアプローチが主流となっている。本研究においてはこのアプローチを踏襲しさらなる精度の向上を目指した。既存手法においては物体の顕著性を局所特徴などを用いて推定し、これを活用して大まかな物体の領域を事前に求めている。しかし、これらの方法で事前に推定した物体の領域は誤りを含んでおり、これが精度の低下に繋がっていることが予測される。そこで、本研究では誤りを多く含む教師情報を推定し、これを取り除くことで精度向上を目指した。 誤りを含む領域分割結果を除去するために、推定結果の一貫性から領域分割結果がよいかどうかの推定を行った。一貫性を用いた領域分割結果の推定は有効であり、各領域分割結果について領域分割結果のよさの評価値を与えることで、ランク付けによるノイズ除去を行うことができた。 また、弱教師あり領域分割の応用として、異なる素材の物体の質感の転送の精度向上を行った。深層学習を用いた画像のスタイルの転送により、異なる素材の物体のスタイルを転送し画像を合成することで物体の質感を転送する試みがあった。しかし、画像のスタイルを変換する場合には質感を変換したい物体以外の領域も変化する場合があった。そこで、本研究では物体の領域を推定してからその領域部分のみを変換することで変換精度を向上させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近年流行している手法を取り入れ、弱教師あり領域分割の精度改善を行った。また、独自の手法により学習画像のノイズを取り除くことができた。しかしながら、ノイズ除去を行った結果による教師情報を用いて行った学習は予想以上の精度向上には繋がらなかった。これはおそらく、ノイズ除去により学習画像の枚数が大きく減少してしまったからであると考えられる。ただし、大きな精度向上には繋がらなかったものの、推定結果の一貫性からノイズ除去が可能であることは確認できた。 少量の精度のよい領域分割結果を活かす上で、半教師あり学習を参考にして研究を行った。特に、近年注目を集めている強化学習を半教師あり学習と組み合わせることで、より精度のよい半教師あり領域分割の学習が行えるのではないかと考え、これについて取り組んだ。結果としては、強化学習を使った半教師あり領域分割の学習は精度向上につながらなかった。原因を考えるためにクラス分類の半教師あり学習を試したが、これに関してもよい精度は得られず、強化学習を半教師あり学習に活用するのは難しいことが確認できた。また、クラス分類でよい精度を達成している半教師あり学習手法を領域分割の半教師あり学習に応用した。しかし、これに関しても精度の改善が見られなかった。以上の結果から半教師あり領域分割により、少量の領域分割結果を活用することは現状の知見からは難しいと判断できた。
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今後の研究の推進方策 |
現状の知見からは半教師あり学習を活かすことで大幅な精度改善を得るのは難しい可能性が高い。そこで、今後に関しては、学習画像自体の枚数を増加させることでよい領域分割結果の数自体を増やすことを目指す。具体的にはWeb上から大量にWeb画像を取得することで弱教師ありのタグ付画像の大幅な水増しを行う。既存のベンチマークのデータセットの画像枚数は1万枚程度であるが、Web画像を用いることでこれを10万枚に増やすことができるはずである。 またクラス分類の半教師あり学習において有効であると知られているアンサンブル学習を弱教師あり学習に取り入れる方法を考えている。クラス分類においては学習モデルの重みのアンサンブルにより大きな精度向上を達成したが、領域分割においてこれを再現することはできなかった。しかしながら、弱教師あり領域分割には半教師ありクラス分類と学習条件が近い部分があり、有効である可能性があり試す価値がある。具体的には、本研究では教師情報のアンサンブルを行うことでより堅牢な弱教師あり学習に繋がるのではないかと考えている。
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