研究実績の概要 |
2018年に発表されたPSAという弱教師あり領域分割手法がある。PSAはCRFを適用した領域分割結果における領域の類似度を学習し、この領域の類似度を使うことで領域分割の結果を改善するという新しい概念を取り入れた弱教師あり領域分割手法であり、大きな精度向上をもたらしている。本年度の研究においては更なる精度向上を目指すためにこの手法を活用することを考えPSAが学習時に用いているCRFの問題点に着眼した手法を考案した。この研究においては、CRF適用前とCRF 適用後の領域分割結果を入力として, これらの二つの領域分割結果からできるだけ多くの正解領域を得るという新しいタスクを設定した。これを達成するために,提案手法においては自己教師学習による変化領域の推論を行っている。自己教師学習とは、人手によるアノテーションを必要としない教師情報を用いて学習を行う手法である。二つの推測結果の差分は簡単な処理で得ることが可能であり、教師情報を必要としないのでこの変化領域の推論は自己教師学習の一つであると考えることができる。 提案手法では自己教師あり学習による変化領域の推論が学習サンプルの外れ値をよく発見できることを確認し, この推論結果を入力マスクのラベルの確信度として活用し、領域補正を行うことが可能であることを示した。また、本研究ではこの手法を用いて学習中の教師情報におけるノイズを推定し, 正しいラベルに上書きをするという難しい課題についても取り組んだ。昨年度の手法においては画像レベルで誤りを多く含んでいる教師情報の推定を試みていたが、本手法では誤りの推定を領域レベルで行い、さらにこれを新しい教師情報に置き換えることができた。これにより、本手法はPascal VOC 2012 データセットの弱教師あり領域分割手法において65.3%を達成した。これは現在の弱教師あり領域分割における最高精度である。
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