次世代型生体用金属材料として有望視されている、低磁性と低弾性率を兼ね備えたZr合金に対して積層造形技術の応用と熱処理による組織制御を導入することで、金属系バイオマテリアルの機能性向上を目的として研究を行った。Zr合金の弾性率分布のアンシスでのシミュレーション解析を進め、さらにZr合金における磁化率の測定や、MRI撮影の際のメタルアーチファクト範囲の測定を行った。複数の撮像条件でのMRIアーチファクト評価を行い、Zr合金は他の歯科用合金と比較してアーチファクト範囲が小さくなり、アーチファクト範囲は金属材料の体積磁化率、質量、重さに比例して大きくなることが明らかとなった。このことからMRI撮影前に、事前にアーチファクトの範囲をある程度予測することが可能となると思われる。耐食性の評価では、様々な熱処理条件で、xy面とxz面のアーノード分極試験と試験後の組織像観察、および溶出試験を行った。結果から、溶融境界部が腐食されやすいということと、造形時のxy平面とyz平面では溶融境界の構造に差があることから耐食性における異方性が現れることが明らかとなった。さらに熱処理により溶融境界が消失することから、熱処理が耐食性における異方性の軽減に有効であることが明らかとなった。これらの一連の研究から、次世代型バイオマテリアルであるZr合金にSLMプロセスの導入が可能となり、機能性と安全性を向上させた新たな低磁性合金を生体材料として応用できる可能性が示唆された。
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