研究課題/領域番号 |
17J10360
|
研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
長尾 真弓 明治大学, 明治大学大学院農学研究科博士後期課程, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
キーワード | ジビエ / フードシステム / 消費者行動 |
研究実績の概要 |
本年は、野生動物の肉(ジビエ)のフードシステムの構成主体のうち、食肉処理業者と消費者の2つについて分析を進めた。 前者については、食肉処理業者はジビエのフードシステムの多くの役割を担う主体であり、その行動について実態分析を行った。食肉処理業者は、仕入れ元であるハンター、販売先である卸売業者や小売業者らと信頼関係に基づく取引を行うことで取引関係を継続していた。特に、実態調査では食肉処理業者と卸売/小売業者との関係性についてより詳細に把握することができ、これまで実態が明らかになっていなかった流通段階での関係性について考察できた。 後者については、アンケート調査を実施した。フードシステムの川下に位置する消費者は、一般にジビエになじみがないと言われており、ジビエのフードシステムを確立するために消費拡大の方策を検討することが必要である。本分析では同一の回答者に追跡調査を実施し、パネルデータとしたことで、行政等による消費拡大の取り組みの継続によるジビエに関する消費者の認識の変化が消費行動の変化(消費の増加)に関連しているかを分析した。その結果、これまでにジビエを消費した経験のある消費者でもここ1年の間で消費を繰り返している消費者は少なかった。また、これまでにジビエを消費した経験がない消費者の多くがここ1年でも消費をしておらず、全体として消費拡大の傾向はみられなかった。ジビエを繰り返し消費している消費者と繰り返し消費をしていない消費者でジビエに関する知識や認識、情報に対する行動の差を分析したところ、ジビエの販売/消費先に関する知識の深化や情報に対する行動の積極性が消費選択に影響を与えていた。したがって、ジビエ消費のリピートには、販売や消費場所に関する情報提供がより一層必要となってくることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進展しているといえる。 研究目的の遂行には、ハンターと食肉処理業者の関係性に関する実態の把握及び分析がまだ不十分である。両者の関係性に関して、食肉処理業者側からの把握は概ね良好に進んでいるが、ハンター側からの把握がまだできていない。今後、ハンターの行動分析と食肉処理業者との関係性の分析を強化する。 消費者の分析に関しては、ほぼ予定通りに進んでおり、本年度でパネルデータの分析をしたことでフードシステムの川下における消費の仕組みづくりについて、今後の方向性を検討することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であるが、研究実施計画に大幅な変更はなく、研究費の使用計画についても大きな変更はない。 次年度は、これまでの研究成果を踏まえ、ハンターの行動と食肉処理業者との関係性について分析を進める。具体的には、食肉処理業者と登録/専属関係にあるハンターとそうではないハンターではどのような違いがあるかを明らかにし、ジビエのフードシステムの川上に位置する捕獲段階における食肉利用の仕組みづくりを検討する。進め方としては、まず、文献のサーベイ及び行政機関等へのヒアリング調査により捕獲に関連する制度及びハンターの実態を把握する。次に、ハンターへのヒアリング調査及びアンケート調査を実施することで、ハンターの捕獲行動が何によって規定されているのか、また食肉利用を進める上での課題は何かを分析する。 また、最終年度であるため、フードシステムやジビエに関するデータの整理や文献のサーベイを行う。その上で、これまでの研究結果をとりまとめ、本研究の目的であるジビエのフードシステムの事業化の仕組みづくり及びフードシステムの成立要件について検討する。
|