本研究の目的は獣害対策の一環として取り組まれている野生動物の有効活用、主に食肉化(ジビエ利用)の推進をいかにして進めるか、フードシステムの視点を用い、生産(捕獲)~消費までの仕組みを捉えることである。 本年度は前述した目的を達成するために、ジビエのフードシステムを構成する主体のうち、川上に位置し生産者に該当するハンター、川下に位置する消費者を対象とし、それぞれの行動を分析した。 まず、消費者行動について、昨年度から継続して行っていたジビエ消費に関する消費者の意識・知識・態度及び食経験の変化とその要因を明らかにした。分析より、ジビエの消費拡大には消費者が繰り返しジビエを消費していくことが重要であるが、現状では牛肉や豚肉に比べて流通量が圧倒的に少ないため、消費をする際にはジビエの消費場所や関連する知識が重要な要素となっており、ジビエのなじみのなさには流通量の確保も必要となっていくことが示唆された。 次に、ハンターの行動について実態調査及び分析を行った。分析対象は北海道の日高地域であり、エゾシカ肉である。ハンターの役割は鳥獣被害対策の実施者であり、同時に、食肉用の捕獲の実施者でもある。したがって、ハンターは捕獲の量(有害捕獲)と捕獲の質(食肉用捕獲)の両方が期待される存在であると考えた。そこでハンターの行動はどのようになっているかを、捕獲奨励金と食肉処理業者による食肉用個体の買い取りを視点に分析した。分析より、有害捕獲の多くを実施するハンターの一部が、本来の趣味としての狩猟から捕獲奨励金及び買取を意識した収入元としての狩猟に意識が変化しており、したがって、ハンターはセミ(プロ)化しているこが明らかになり、これらのハンターが捕獲の「量」と「質」を伴う捕獲の実施者となっていた。有害捕獲と食肉化の推進には捕獲制度の整備と捕獲後の出口である食肉処理場の整備も重要であることが示唆された。
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