固体発光性分子は、有機ELや化学センサーなどへの応用が期待され、広く研究されている。また、典型元素錯体を基盤とした発光材料は、高効率な発光特性や刺激応答性等を示し、盛んに研究開発がなされている。申請者はこれまでに13族元素β-ジケトイミネート錯体やそれらを含む共役系高分子を合成し、凝集誘起型発光や結晶化誘起型発光などといった優れた固体発光特性について報告してきた。また、β-ジケトイミネート配位子を用いた種々のアルミニウム錯体の合成が盛んに研究され、重合触媒や不活性共有結合の活性化などへと応用されてきた。本研究では、固体発光性を示すアルミニウムヒドリド錯体の合成に成功した。得られた化合物は、結晶化誘起型発光特性を示すアルミニウムヒドリド錯体の初めての例である。このような錯体は今後さらに広範な機能性発光材料の開発基盤になりうるものであり、極めて重要性の高い物質群であると言える。 また、上記のような優れた物性を有するβ-ジケトイミネート錯体を主鎖に含有する共役系高分子の合成手法も確立し、得られた高分子の物性を詳細に評価した。この結果、この高分子が外部環境に鋭敏に応答して発光のスイッチングを発現するということを見出した。 さらに、配位子構造を最適化することにより、発光効率がほぼ理論限界に達する固体発光性材料の創出も実現した。このような配位子設計指針をさらに他の元素の錯体へと応用することにより、今後、より多くの元素について、元素の違いが発光特性に及ぼす影響を評価できるようになり、革新的元素材料の創出につながると強く期待される。
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