研究課題/領域番号 |
17J10546
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
加藤 陽 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 電動義手 / 角度制御 / 皮膚表面変形 |
研究実績の概要 |
初年度は,上肢切断者のための電動義手をより操作者の意図通りに操作可能とするための制御手法の構築に向け,皮膚表面変形に対する筋活動状態モデルの構築を行った.所属する「文部科学省 博士課程教育リーディングプログラム」の一環として,生体モデリングなどを専門とするカリフォルニア大学バークレー校のProf. Ruzena Bajcsyの研究室に約6ヶ月間のインターンを行った.渡航先では,超音波画像から体内の筋形状変化を取得し3次元筋モデルを作成することで、関節角度や関節にかかる負荷を変化させた際の筋形状の変化を明らかにした.滞在先での研究成果はロボット分野における最高レベルの国際会議であるIEEE ICRA2018に採択されており,さらなる成果の学会誌への投稿を予定している.また,皮膚表面形状の変化に対し筋粘弾性モデルの適用による電動義手の実時間制御に関する成果が同会議に採択された. 一方でこれまで取り組んできた,意図する関節角度に対する皮膚表面形状変化の関係の検討として,非切断者と前腕切断者の両者を被験者として計測実験を実施した.検討の結果,角度推定に用いる関係式として線形近似が可能であることを明らかにした成果を看護理工学会誌において出版され,高精度に推定可能なモデル,パラメータフィッティング手法の検討として,手関節角度の推定に必要なセンサ数を検討した成果がJournal of Biomechanical Science and Engineeringに採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,皮膚表面変気に基づく体内の筋形状をモデル化し,切断者が意図通りに操作可能な電動義手を開発することである.目的を達成するため,(A)皮膚表面変形に対する筋活動状態モデルの構築と,(B)切断者に早期適用可能な複数の関節角度を制御する電動義手の開発,の2つのサブテーマに分けて研究を実施している.初年度は,特に(A)をさらに以下2つのテーマに分けて実施した. (A-1)筋隆起位置と皮膚表面のひずみを利用した皮膚表面変形の計測:皮膚表面変形の計測手段として,接触センサを使用した計測データに対する解析を行った.切断者と非切断者を被験者とし,意図する関節角度に対する筋隆起分布の変化を広域において計測し,計測結果に対し手関節角度推定に使用するセンサ数を変化させた.オフラインの解析により,高精度に手関節角度を推定するために必要なセンサ数を明らかにしJBSEに採択された. (A-2)統計形状モデルを用いた筋活動状態モデルの構築:UC BerkeleyのProf. Ruzena Bajcsyの研究室に半年間滞在し共同研究を行った.上肢の関節角度と関節にかかる負荷を変えた際の,筋肉と骨の3次元モデルの作成を行った.同時計測した超音波画像と3次元モーションキャプチャシステムのデータから作成した3次元モデルに対し,筋の形態的変化を解析した成果がIEEE ICRA2018に採択された. 以上から,研究課題(A)の達成に関しては予定していた通り実施することができた.一方で,1自由度の電動義手への提案する制御手法の実装を並行して実施した.筋肉の粘弾性特性を考慮に入れた手関節角度推定式を用いて,手関節を増設した電動義手の手関節角度のリアルタイム制御を行い,IEEE ICRA2018に採択された.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,研究課題(B)切断者に早期適用可能な複数の関節角度を制御する電動義手の開発を行うため,提案するシステムを装着可能にする.具体的には,ソケットにより義手とセンサを装着した状態においてもこれまでに得られている角度推定精度を維持するため,センサの取り付け方法とソケットの装着方法を検討する.更に,義手の適用訓練の1つとして行われる日常生活動作を模したPick and Place taskを義手を装着した状態で行い,手関節角度の制御による操作者の身体にかかる負荷の低減について検討を行う.最後に切断者においても同様に義手を装着した状態における手関節角度制御精度の評価を行い,研究の成果を学術誌に投稿する予定である.
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