研究実績の概要 |
平成29年度は、当初の計画通りにトルコ南東部のスマキ・ホユック出土の動物骨(総合研究大学院大学所蔵)、およびアゼルバイジャン西部のダムジリ洞窟、ウズベキスタン南部のカイナル・カマル岩陰出土資料の分析を中心に進めた(ともに東京大学発掘)。 スマキ・ホユックはチグリス川上流に位置する紀元前7,000頃の遺跡であり、当地において最古の土器を伴う新石器集落遺跡である。層位情報こそ未確定であるが、発掘年度との対比から集落が形成された段階ですでに家畜ヒツジ/ヤギ/ブタ/ウシを伴っていたことが判明している。 ダムジリ洞窟では、紀元前6,400年から紀元前5,700年に相当する層が発掘されている。アゼルバイジャンを含むコーカサス地域では、紀元前6,000年頃に最古の農耕村落が出現することがこれまでの研究で明らかになっていたものの、それらがどのようにして成立したのかは不明な点が多かった。これは在地における中石器時代末(紀元前七千年紀後半)に属する遺跡が知られていなかった為である。今回、ダムジリ洞窟ではまさにその時期の様相を明らかにすることに成功した。本研究によって、中石器時代末には家畜動物利用の証拠は一切確認されず、それが紀元前六千年頃を境にして突如として家畜ヒツジ/ヤギ/ウシが出現することが明らかとなった。 カイナル・カマル岩陰では完新世初頭から現代にかけての断続的なシークエンスが得られている。注目したいのは紀元前七千年紀層と六千年紀以降の層の間でヒツジ/ヤギが大幅に増加する点である。つまりここでもこの時期を境にして家畜動物が導入された可能性がある。
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