研究課題/領域番号 |
17J10577
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
加藤 孝信 学習院大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 哺乳類初期発生 / 左右軸決定機構 / 光ピンセット / 生物物理学 |
研究実績の概要 |
ノード不動繊毛という生体内の微小な "アンテナ" を直接触ることに初めて成功した。 光ピンセットという、高度に集光したレーザー光を用いて溶液中の粒子を "非接触" で捕捉・操作する技術がある。光ピンセットは、これまで生体分子 "1個" を自在に操ることのできる技術として広く使われてきた。我々は、この光ピンセットを、もっと大きな構造に適応させる。細胞小器官という生体内の複数分子から構成された構造に対して適用させることを目指す。 具体的には、"ノード不動繊毛" という細胞小器官を扱う。ノード不動繊毛は、私たちの体の初期発生の過程で、心臓が左にあり肝臓が右にあるといった "体の左側と右側の違い" を決定するときに重要なはたらきを担う器官だ。このノード不動繊毛は、いわばアンテナのように、外部からの "力" を感知して遺伝子の発現をOn/Offすることにより体の左右軸を決定するといわれているがよくわかっていない。 では、このノード不動繊毛に人為的な "力" を与えたら、このアンテナは反応するのであろうか? そこで、本研究では、ノード不動繊毛に対して "取っ手" となるポリスチレンでできた微小なビーズを付着させることによって初めて光ピンセットを使用して捕捉することに成功した。現在、この光ピンセットを組み込んだ顕微鏡を用いてノード不動繊毛に人為的な "力" 与えるべく試行錯誤している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、以下の2点の実施を計画していた ①ノード不動繊毛1本につき1個の蛍光ビーズが十分な接着強度で付着する条件を探す。条件検討として、繊毛に付着させる蛍光ビーズの大きさや濃度・表面の修飾基を変化させるとともに、反応時の溶液条件や反応時間の検討を行う。 ②繊毛“1本”に着目した詳細な定量的解析を行う。繊毛にはたらく力・繊毛の角度や曲率の変化と、カルシウムシグナルの時空間的なパターンの相関について、自作ソフトウェアを用いて詳細な解析と緻密な検証を行う。 の2点の実施を計画していた。 我々は、これらの実験を実施し、ノード不動繊毛が "力" を感知するアンテナであることを支持する結果を得るなど、一定の成果を出した。これらの結果に関してすでに学会発表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
ノード不動繊毛が "力" を感知するアンテナであることを支持する結果を得たが、まだ決着をつけるにまでは至っていない。薬品処理や遺伝子組換えマウスを用いた対照実験を積み重ねることにより、"力" を感知するアンテナでないと説明できないというところまでのデータの取得を行う。
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