研究課題/領域番号 |
17J10583
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松下 裕司 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 電気熱量効果 / 強誘電体薄膜 / 小型ヒートポンプ / 熱伝導解析 / 有限要素法 / P(VDF-TrFE) |
研究実績の概要 |
電気熱量効果は、電気双極子を有する物質に電界を印加・除去する、分極エントロピー変化に伴い起こる発熱・吸熱反応を指し、高効率ヒートポンプとしての応用が期待されている。電気熱量効果は印加する電界強度に依存するため、薄膜において低電圧で巨大な温度変化が発現すると予想されるが、薄膜の熱容量が小さいため温度変化の直接観測した例は少ない。本研究では熱容量の小さな温度センサとして薄膜熱電対を採用し、それを電極と併用する測定構造を考案し測定を行ってきた。 ・基板方向への熱拡散の定量評価 熱拡散の影響を抑えるため、交流電界を印加し測定を行ってきた。しかし、その影響を定量的に把握するに至っておらず、強誘電体の持つ膜本来の温度変化の評価が行えていなかった。今年度は有限要素法を用いた熱伝導解析を行うことで、基板と薄膜の界面熱抵抗の影響並びに、薄膜の膜厚に比例する熱拡散の時定数の影響について調べた。その結果、基板方向への熱拡散の影響を抑制できる膜厚並びに印加電界周波数を見出した。P(VDF-TrFE)薄膜では数μmオーダーの膜厚が最適であることがわかった。 ・P(VDF-TrFE)厚膜の作製 絶縁破壊電界の大きな有機強誘電体ポリマー、ポリフッ化ビニリデン/三フッ化エチレン共重合体(P(VDF-TrFE))を採用した。nmオーダーの薄膜や数百μmシートにおける作製や評価について多くの報告が行われてきたものの、数μmオーダーの薄膜における報告は少ない。スピンコート法で用いる溶媒濃度を調節することで厚膜の作製を可能にし、強誘電性を有する膜を得ることに成功した。さらに、結晶化アニール処理を行うことで特性の向上に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電気熱量効果は電界印加に伴う、材料内での発熱・吸熱反応であるため、デバイス応用のためには冷媒を設け熱を交換する必要がある。このとき、強誘電体内の熱を効率よく交換できるかどうかが素子効率に大きく関わる。熱伝導解析より明らかとなった見識は測定条件にとどまらず、材料内の熱を効率良く取り出す条件であるため、素子効率を考える上で重要な知見となる。電気熱量効果のデバイス応用に大きく貢献できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
作製した厚膜における電気熱量効果の直接測定に取り掛かる。また、P(VDF-TrFE)は低ヤング率の材料であるため、厚膜化により特性が変化すると考えられる。圧電性などは2次の電気熱量特性に大きく影響するため、その特性を把握することは重要である。正圧電特性を評価し、面内及び面外の歪が及ぼす2次特性を議論することで、電気熱量効果の特性向上に向けた指針を提示する。
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