研究課題/領域番号 |
17J10588
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大同 暁人 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | トポロジカル超伝導 / トポロジカル相 / 強相関電子系 / 重い電子系 / 非共型対称性 |
研究実績の概要 |
トポロジカル超伝導はトポロジカル量子計算のプラットフォームになりうるということもあり近年注目を集めている物質相である.本課題では,トポロジカル超伝導体の候補物質が現在非常に限られていることを背景として,特に強相関電子系においてトポロジカル超伝導体を発見すること・およびそれを確立することを目的としている.本年度は特に,重い電子系超伝導体UCoGeにおいてトポロジカル超伝導相が発現する可能性について調べた. UCoGeは「非共形対称性」という特殊な結晶対称性を持つ超伝導体であり,近年注目されている“非共形対称性に守られたトポロジカル結晶超伝導”(TNCS)という,よりエキゾチックなトポロジカル相に分類される可能性がある.通常のトポロジカル超伝導が表面にMajorana準粒子を持つことに対応して,TNCSでは表面にメビウスの輪のような構造を持った準粒子が現れる.これは非共形な結晶対称性,トポロジー,そして異方的なクーパー対(つまり,強い電子相関)が物質中で協奏することによりはじめて現れる物質相であり,大変興味深いものである.一方でTNCSが発現する物質が存在するのかという点はほとんど明らかにされておらず,候補物質の提案・検証が喫緊の課題となっている. 本研究員は,TNCSが発現する条件がFermi面のトポロジーと直接結びついているということを明らかにし,第一原理計算により得られているUCoGeのFermi面を用いてUCoGeの高圧下の常磁性超伝導相がTNCSであることを明らかにした.また,得られた公式をCrAs関連物質に適用することで,これらもTNCSの良い候補であることを示した.これらの成果はTNCSの(正確にはZ_4TNCSの)はじめての物質提案であり,強相関電子系超伝導体におけるトポロジカルな性質の理解に貢献するものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
UCoGeというトポロジカル超伝導体の候補物質を新しく提案することができたため,研究はおおむね順調に進展していると判断した.特に,非共型な結晶対称性を持つ超伝導体がトポロジカル超伝導になるかどうかという点を明らかにする一般性の高い公式を得ることができ,それによってCrAs・CrPといった別の候補物質も得ることができた.トポロジカル超伝導体の候補物質はごく限られているので,これら複数の物質を提案できたことは重要な成果であり,超伝導体のトポロジカルな性質の理解に向けて重大な貢献をすることができたと考えている.以上の成果は論文にまとめてPhysical Review Letters誌に投稿中であり,いくつかの国内学会・国際学会で発表済みである.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果で得られた知見をもとに,非共型な対称性に守られたトポロジカル超伝導相のさらなる探索を進める.主に物質提案に主眼を置き,d波超伝導体の超格子やUCoGeの強磁性相と共存する超伝導相などのトポロジカルな性質を検討する. また,バルクの超伝導体におけるIntrinsicなトポロジカル超伝導相のほか,物質制御によってExtrinsicにトポロジカル超伝導を実現する可能性についても検討する.具体的には,近年実験的に可能になった特殊なLaserを照射した超伝導体と金属の接合系などを調べ,非平衡状態において非従来型超伝導やトポロジカル超伝導が実現する可能性を調べる. さらに,近年新しく提案されたHigher-orderのトポロジカル相について,超伝導体での実現可能性を検討するとともに,その準備として絶縁体での実現についても議論する.高次多極子など,関連する概念についても検討する.
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