第60次南極地域観測隊(2018年11月から2019年3月)に参加し、南極リュツォ・ホルム湾ラングホブデ袋浦にあるアデリーペンギンルッカリーの繁殖個体を対象に超音波バイオテレメトリー手法を用いた実験を行った。ID及び深度情報を約1秒間隔で発信する超音波発信機を20羽に装着した。また、ID・深度・温度情報を1秒間隔で発信し、かつ発信信号を受信することもできる双方向通信ロガーをGPSデータロガーと一緒に13羽に装着した。超音波受信機3台を岸に係留し、沿岸の海氷の割れ目に落とし、約15m置きに平行に設置した。本研究課題で昨年度に開発・論文発表した水中高精度3次元測位手法を応用して、アデリーペンギンを測位し、集団潜水(採餌)行動を観察した。 2019年1月4日13時から1月11日6時までの約7日間、受信機を係留し続け、アデリーペンギンを測位することに成功した。その間、2羽から5羽程度の集団潜水を3次元で同時観察することができた。また、双方向通信ロガーに記録された深度データから、2羽から4羽程度の集団潜水(採餌)行動を観察することができた。 本研究ではアデリーペンギンの集団潜水(採餌)行動を複数個体動時に3次元空間的に観察することに成功した。得られたデータはアデリーペンギンが集団として、時空間的に局所的ではあるが、餌環境にどう応答しているかを示すものであると考えられる。今後は得られたデータを解析することにより、アデリーペンギンの群れ行動及び環境応答を調べていく。
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