研究課題/領域番号 |
17J10610
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
藤原 悠紀 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 疾病研究第四部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | リソソーム / オートファジー / RNautophagy / DNautophagy / 核酸分解 / タンパク質分解 / 自然免疫 / ウイルス増殖 |
研究実績の概要 |
リソソームは内部に多様な加水分解酵素を含むオルガネラであり、ここに細胞内の物質を輸送し分解する機構を広義にオートファジーと呼ぶ。近年、採用者(藤原悠紀)らはリソソームがATP依存的にRNAやDNAを直接内部へと取り込み分解するという膜透過型の新たなオートファジーを発見し、RNautophagy/DNautophagy(RDA)と名付け報告してきた。このシステムにおいては2種類のリソソーム膜タンパク質、LAMP2CおよびSIDT2が関わることが明らかとなっている。 リソソームは内在性の物質代謝に深く関わる一方で、非自己由来分子の隔離・分解を通じて免疫にも深く関わりうる。後期エンドソーム/リソソーム内はウイルス由来核酸の認識の場にもなることなどから、採用者はRDAによる非自己由来核酸のリソソームへの輸送・隔離・分解・認識が細胞における免疫機構の一部として働くのではないかと考え、研究を開始した。まず採用者はウイルス感染のモデル実験系においてRDA関連遺伝子が特異的に発現上昇することを見出した。またこの発現上昇の上流には自然免疫応答における上流因子の少なくともひとつが位置していた。これらからRDAがウイルス感染を認識した細胞で惹起され、抗ウイルス免疫応答の一環として働くことが示唆された。採用者はさらにSIDT2をノックアウト(KO)した細胞において、ある病原性ウイルスのゲノムRNAの感染後の増加量が野生型細胞と比較して顕著に上昇し、さらにはウイルスを構成するタンパク質および感染性のウイルス粒子の産生量も同様に上昇していることも見出している。 以上に加え採用者らは最近、リソソームによる新たなタンパク質分解機構を見出しつつある。今後はRDAの免疫における役割に関する研究と、新たな展開を向かえたリソソームによる新規タンパク質分解システムの研究の2つに主に注力して取り組んでゆく予定でいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記のようにRDAがウイルス感染を認識した細胞において惹起され、ウイルスの増殖に対して防御的に働く可能性を示唆するデータが得られており、さらに自然免疫応答において重要な役割を担う因子がその上流因子として見出されるなど、ウイルス感染モデル系におけるRDA関連遺伝子発現上昇の分子機構の一端も明らかとなっているほか、SIDT2 KO細胞におけるウイルスの複製・増殖が野生型細胞に比して促進されていることから実際のウイルス感染細胞においてもRDAの働きがウイルス増殖に対して抑制的に働く可能性が見出されるなど、順調に研究が進展している。採用者はこれらの内容について、第60回日本神経化学会大会においてシンポジウムをオーガナイズし口演を行うなど、研究成果の発信も積極的に行っている。加えて採用者らは新たにリソソームによるタンパク質分解システムを見出しつつあることなどから、研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。採用者はこちらの研究についても「平成29年度 脳とこころの研究 第三回公開シンポジウム 認知症と生きる、認知症に挑む よりよい暮らしと社会のために、研究者の挑戦」において一般市民向けの発表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、今後はRDAの抗ウイルス免疫応答における役割に関する研究と、新たな展開を向かえたリソソームによる新規タンパク質分解システムの研究の2つに主に注力して取り組んでゆく予定でいる。それぞれについてその分子機構から生理的意義の解明までを目標とし、必要に応じて無細胞実験系から培養細胞、さらにはモデル動物を用いた動物個体レベルの解析まで、幅広く研究を展開してゆく。また必要に応じて共同研究等も積極的に行ってゆく。
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