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2017 年度 実績報告書

マルチオミクス解析によるバイオフィルム内休止細菌の代謝制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17J10663
研究機関早稲田大学

研究代表者

千原 康太郎  早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2020-03-31
キーワード休止細菌 / 緑膿菌 / バイオフィルム / RNA翻訳制御 / RNA-タンパク質インタラクション
研究実績の概要

バイオフィルムが引き起こす感染症慢性化の要因の一つとして休止細菌の存在が挙げられる。休止細菌は耐性遺伝子を有する耐性菌とは異なり、自らの代謝活性の一部を制御することで抗生物質から生存可能であり、その根絶の有効な打開策は示されていない。本研究では緑膿菌バイオフィルム中の休止細菌代謝制御機構の理解を目的とし、バイオフィルム中の休止細菌の分取およびトランスオミクス解析のためのタンパク質抽出を行った。蛍光希釈法によってバイオフィルム中の休止細菌の局在観察および抗生物質感受性試験を実施したところ、バイオフィルム底部に休止細菌が局在し、抗生物質に対して寛容性を示すことが明らかとなった。バイオフィルム切片からレーザーマイクロダイセクション法(LCM)により休止細菌集団および分裂細菌集団を切り出し、細胞溶解後、抽出されたタンパク質の濃度をLowry法により測定したところ、いずれの集団からもLC-MS/MS解析に十分なタンパク質を回収できた。
またバイオフィルム全体のRNA-タンパク質インタラクションを包括的に理解するために、RNAシャペロンHfqを対象としたCLIP-seqを実施した。CLIP-seqとは紫外線でHfqとターゲットとなるRNA複合体をクロスリンクさせた後、FLAGタグを介した共免疫沈降法により複合体を回収し、NGSにより網羅的にRNAシーケンスする手法である。プランクトニック環境およびバイオフィルム環境それぞれでCLIP-seqおよびNormalizationのためのWhole Transcriptomeを実施した。バイオインフォマティクス解析の結果、既知のHfq結合RNAにおいてクロスリンクサンプルでのみ特異的にピークを確認することができた。以上の結果から、シーケンス結果の信頼性およびクオリティは非常に高いと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画通りドリップフローリアクターで形成されたバイオフィルム中の休止細菌、分裂細菌から十分量のタンパク質を回収できた。また、留学先のドイツ、ヴュルツブルク大学で、LC-MS/MS解析およびNGS解析手技、さらには細菌集団からタンパク質とRNAを同時に抽出する手法を学んできた。今年度内にLC-MS/MS解析まで実施することはできなかったものの、留学先での経験を活かし、すぐにでもNGS、LC-MS/MSを実施することができる段階までたどり着いている。さらに緑膿菌バイオフィルムおよび浮遊細菌でのRNAーRNA、RNAータンパク質インタラクション解析も実施し、バイオフィルム中の休止細菌と分裂細菌のトランスオミクス解析に利用可能な多くのアノテーションデータを獲得するに至った。

今後の研究の推進方策

これまで各細菌集団の回収にLCMを使用してきたが、回収効率を改善するため、今後はFACS Aria IIIuを使用して各細菌集団を回収する計画である。また、回収した細菌集団からRNAとタンパク質を同時に抽出し、RNAに関してはNGS解析を、タンパク質に関してはLC-MS/MS解析を実施する予定である。さらに、CLIP-seqの解析結果から同定された新規なRNA―RNA、RNAータンパク質インタラクションに関しては翻訳融合株を使用した転写後制御機構解析およびゲルシフトアッセイにより確認する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (1件)

  • [国際共同研究] IMIB, Wuerzburg university(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      IMIB, Wuerzburg university
  • [学会発表] バイオフィルムを形成する細菌の増殖速度と抗生物質抵抗性2017

    • 著者名/発表者名
      吉山千尋、千原康太郎、河合祐人、松本慎也、常田聡
    • 学会等名
      第31回日本バイオフィルム学会

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公開日: 2018-12-17  

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