研究課題/領域番号 |
17J10672
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
金 煕宰 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 物性理論 / トポロジー / トポロジカル絶縁体 |
研究実績の概要 |
平成30年度は主に以下の2項目について研究を行った。 第一に、映進対称性を持つ系のトポロジカル相に、空間反転対称性を新たに加えた際の、トポロジーと対称性の関係について考察した。特に、トポロジカル不変量がどのように表されるかについて理論を構築し、さらにトポロジカル相に関する先行研究、例えばsymmetry-based indicatorやK理論の結果と比較した。まず、映進対称性のみを有する空間群7番の場合、Z2トポロジカル不変量の表式が波数空間内の積分で表されていたのが、空間反転対称性を加えることで波数空間内の高対称点での既約表現で表されることを、空間群13番、14番の場合について示した。特に、空間群14番の場合は、Z2トポロジカル不変量とチャーン数の半分の和が波数空間内の高対称点での既約表現で表されることを示した。さらに、これらのトポロジカル不変量と、空間反転対称性によって守られる高次トポロジカル絶縁体とどのように関係があるかを示した。 第二に、nonprimitiveな格子の空間群(空間群9番、15番)において、映進対称性を持つ系を特徴付けるトポロジカル不変量がどのように表されるかについて、同様に理論を構築した。まず、空間群7番と9番の間の関係を調べ、空間群9番でのZ2トポロジカル不変量の表式を導出し、空間反転対称性を加えて、空間群15番の表式を導いた。特に、空間群9番の場合、Z2トポロジカル不変量の表式に、チャーン数の表式が現れることを示した。また、空間群15番の場合、結果として、Z2トポロジカル不変量の表式が高対称点での既約表現で表されること、高次トポロジカル絶縁体と関係することを示した。こうした結果は電子系のみならず、フォトン系など他の粒子系についても重要な意味を持っていて、今後さまざまな系に応用できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
映進対称性を持つ系のトポロジカル相に空間反転対称性を加え、さらに先行研究と比較することで、映進対称性を持つ系のトポロジカル相の理解が深まった。特に、映進対称性を持つ系を特徴付けるトポロジカル不変量の表式に関する理論構築は、これらより対称性の高い空間群や他の粒子系に対しても適用できる。さらに、これらのトポロジカル不変量と高次トポロジカル絶縁体との関係は、空間群対称性に保護されたトポロジカル相の間の関係に新たな視点を与えたと考えられる。これは今後のトポロジカル結晶絶縁体相を示す物質探索の実験・理論研究において重要な結果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の対象をより広い範囲に広げ、フォトン系やマグノン系に関して研究を行う。特に、フォトニック結晶系に対して、バンド計算のシミュレーションを行い、構築した理論を用いて映進対称性に守られるトポロジカル相を探索すると同時に、それが高次トポロジカル絶縁体となる可能性について考察する。別の研究の方策として、映進対称性を持つトポロジカル相と高次トポロジカル絶縁体の関係を、表面状態の変化やワイル点を用いた一般的な相転移を調べ、引き続き理論構築を行う。
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