研究課題/領域番号 |
17J10732
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
澁谷 壮紀 東京工業大学, 社会理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
キーワード | イデオロギー / 右派ポピュリスト政党 / 政策選好 / 主観的幸福 |
研究実績の概要 |
研究実施計画の通り、これまで3つのメソッドに基づいて、研究を行なった。 (1)マクロレベルは、有権者の政策選好に関する指標の作成と検証を行なってきた。その結果、主に先進国で起きている極右政党や右派ポピュリスト政党の躍進など、近年の現実社会で起きる政治の変化を作成した指標で表現することが可能となり、分析のための基盤を作成した。さらに極右政党と右派ポピュリスト政党の躍進に関して、マクロな有権者の政策選好の指標をもとに時系列比較を行った結果、現実政治では共通点があるものの、それに伴い有権者の政策選好が右傾化している国と、右傾化していない国があることを明らかにした。この結果は、実社会の政治現象が、有権者が求めるものが変化したことと、政党が有権者の支持を得るために変化した2つの要因から起きた可能性を示唆するものであった。現在、これらの研究結果を用いて論文を執筆し、学会誌に投稿予定である。 (2)メゾレベルは、マクロ・ミクロの両側面から分析を行なっている。その中で、幸福感と、イデオロギー性質では、左派的な国・政府の方が主観的幸福は高く、右派的な個人の方が高い主観的幸福を感じている。そこでマクロレベルの有権者のイデオロギーと政府のイデオロギーを推定した指標を用い、パラドックスが生じる原因を明らかにし、日本政治学会の研究会で発表を経て、2018年の日本選挙学会でポスター発表と論文の執筆を行い、投稿予定である。 (3)ミクロレベルは、当該年度にインターネットを用いた調査実験を実施した。このインターネット調査実験を通して、政権による行き過ぎた政策に対して、有権者は政策を適正なものに戻そうとイデオロギーを逆方向に変化させる揺り戻しの現象がミクロレベルでも生じるのかを検証する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に基づき、3つのメソッドで研究しているため、それぞれについて説明する。 (1)マクロレベルは、有権者の政策選好に関する指標作成と検証を行い、時系列比較や国際比較といった方法で研究を行い、論文の執筆を行い、学会誌へ投稿予定である。しかし、本来計画していたデータの比較だけではなく、より詳細に関係性を解明する分析手法を行うことができていない。これは、もともと想定していた有権者の変化の要因の分析とともに、近年の政治状況を鑑みて、右派ポピュリスト政党の有権者の政策選好に与える影響の分析を行うように方針を変更したためである。 (2)メゾレベルは、マクロな有権者のデータと国際的な世論調査データを組み合わせ、分析を行うためのベースを整えた。その中で、主観的幸福とイデオロギーの関係、さらに右派ポピュリスト政党の支持と主観的幸福の関係についての研究を行い、研究会での発表と日本選挙学会で発表予定であり、現在、論文を執筆中である。しかし、有権者のイデオロギーの変化に関しては、多くの研究知見があるため、主観的幸福以外の要因についても研究・分析を行う必要性があると考えられる。 (3)ミクロレベルは、インターネット調査実験を実施し、ミクロな有権者の変化を分析するためのデータを得たことから計画どおりに進んでいると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)マクロレベルに関しては、右派ポピュリスト政党が有権者に与える影響の分析を行う。この研究は、時系列、かつマクロな有権者のイデオロギーに関するデータが必要であったため、研究例が少ない。そこで有権者への影響の分析を行い、論文を執筆し、学会誌に投稿することを目指す。 (2)メゾレベルに関しては、これまでの研究を進展させながら、各種世論調査データを取得し、分析を行う。さらにヨーロッパで定義された右派ポピュリスト政党を拡大させつつ、現代の政治での有権者の政策選好の変化に関する分析を行う。データは揃いつつあるため、分析を進め、論文を執筆し、投稿することを目指す。 (3)ミクロレベルは、平成29年度に行ったインターネット調査実験の分析を進めるとともに、更なるミクロな有権者の変化を解明するために別のインターネット調査実験を行う。これらの分析を速やかに行い、論文化と投稿することを目指す。
|