本年度は、前年に引き続き、3つのメソッドを用いた研究を行なった。 (1)マクロレベルは、各国の有権者の多次元のイデオロギーや政策選好を表現する指標データセットの作成と、その変化の要因を分析してきた。特に右派ポピュリスト政党の支持拡大に関する分析では、ヨーロッパ先進国の有権者が1990年以降に社会政治的なイデオロギーが右傾化し、経済的なイデオロギーが左傾化していることを明らかにした。さらに、右派ポピュリスト政党の支持拡大が、社会や有権者にどのような影響を与えたのかを分析し、先行研究の結論とは異なり、右派ポピュリスト政党の支持拡大は有権者のイデオロギーを左傾化、バックラッシュさせることを明らかにした。これらの研究成果は、日本政治学会・分野別研究会の日本政治過程研究会や公共選択学会での報告を行った。またそれぞれ、2019年の日本政治学会の報告と、海外の査読付き学術誌への論文投稿を予定している。(2)メゾレベルは,前年度に引き続き、主観的幸福と個人と国のイデオロギーの関係についての研究を行い、日本政治学会・分野別研究会の日本政治過程研究会と日本選挙学会で報告を行った。さらに、マクロレベルの右派ポピュリスト政党の支持拡大のプロセスと影響の分析を行うための国際比較調査のデータ処理を終え、分析を行っている。これらの研究結果は、現在、学会での報告と論文投稿を予定している。(3)ミクロレベルは、昨年度に引き続き、インターネット調査実験によるイデオロギーの揺り戻しに関する研究を行った。実験結果では、先行研究とは異なり、景気動向の変化の刺激によって経済政策への選好を揺り戻しは確認されなかった。加えて、追加でインターネット調査実験を行い、社会政策においてもバックラッシュが存在していないかを検証している。現在、これらの実験結果をまとめ、海外の査読付き学術誌への論文投稿を予定している。
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