研究課題
将来の行動と相関する海馬神経細胞の発火シークエンスの意義の解明のために、昨年度に引き続き、主にi)状況依存的な経路設計課題の設定、および海馬からの神経活動の記録、ii)自由行動下における海馬シャープウェーブリップル(Sharp-wave ripple)および海馬発火シークエンスの意義の検討のための、フィードバックシステムの開発を行った。i)について、平成29年度までに行動実験系を考案し、海馬CA1野からの神経活動の記録を行ったが、海馬発火シークエンスについてこれまで考えられてきたようなメカニズムではないことが予想される結果となった。そこで、情報科学の分野の視点も取り入れた仮説を検証するのに適した新たな動物行動実験系を考案した。改善した行動実験系において、ラット海馬CA1野から神経活動を記録し、100個以上の神経細胞の活動の同時記録に成功している。現在、統計モデリングの手法も駆使しつつ、データ解析を行っており、一部学会で発表している(Society for Neuroscience 2018, 次世代脳プロジェクト冬のシンポジウム2018、The 5th CiNet Conference)。ii)について、本研究では、特徴的な海馬Sharp-wave rippleを伴う発火シークエンスの意義を解明するために、自由行動下でフィードバックできるシステムを構築した。システムを最適化し、これまでより低いレイテンシでデジタル信号処理を行い、フィードバックすることが可能となった。また、3Dプリンタ等で製作した電極セット(マイクロドライブ)の改良も行い、実験スループットの向上に努めている。現在、ニューロフィードバック実験を行っている。
2: おおむね順調に進展している
新たな行動実験系を考案し、マルチユニット記録法を用いて海馬の神経活動の大規模記録に成功している。データ解析を一部行い、記録した神経細胞から動物の行動を十分デコードできること、また考案した行動課題が研究に適切であることを確認している。マルチユニット記録法と神経活動依存的なフィードバック手法を実現するシステムも構築し、現在動物実験を行っている。
これまでに記録した神経活動データの解析を行う。動物の行動と多数の神経細胞の活動を組み合わせて解析する必要があり、可視化の方法を工夫し、あらゆる視点から解析データについて考察を行う。ニューロフィードバックの実験結果と合わせて、海馬発火シークエンスの意義を生物学的視点、情報科学的視点の両方から解明を目指す。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件)
eneuro
巻: 6 ページ: 0429~18.2019
https://doi.org/10.1523/ENEURO.0429-18.2019
Cell Reports
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