研究実績の概要 |
今年度は、日本人のアスリートを対象としてケガの既往歴と遺伝子多型の関連について検討を行った。対象は日本人のトップアスリート1311名であり、アンケートによるケガの既往歴の調査およびDNA抽出用の唾液サンプルの採取を行った。遺伝子多型はTaqMan法を用いてESR1(rs2234693およびrs9340799)を解析した。ESR1 rs2234693のCアレルを有するアスリートにおいて、過去の筋損傷の受傷率が有意に低く、競技種目や競技歴で補正後も有意な関連が認められた。次に、ESR1 rs2234693が筋損傷の受傷に関連する機序を明らかにするために、健常な若年者261名を対象に筋損傷のリスクファクターである筋スティフネスとESR1 rs2234693の関連について検討を行った。その結果、ESR1 rs2234693のCアレルを有する対象者において、筋スティフネスが有意に低く筋損傷のリスクが低いことが示された。これらの結果から、ESR1 rs2234693は筋スティフネスを介して筋損傷の受傷に関連する可能性が示唆された。 また、今年度の研究では性差に関連する遺伝子多型が骨格筋のMHCの割合に及ぼす影響について検討を行った。筋線維組成は、電気泳動法によりmyosin heavy chain isoformを評価し(MHC-I, MHC-IIa, MHC-IIx)、遺伝子多型については黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンの受容体の遺伝子多型、エストロゲン受容体の遺伝子多型、さらにアンドロゲンの合成・作用に関連する遺伝子多型を解析した。その結果、男性において、卵胞ホルモンの受容体の遺伝子多型、エストロゲン受容体βの遺伝子多型、およびX染色体常に存在しアンドロゲン濃度に関連する遺伝子多型においてMHCの割合と有意な関連が認められた。一方で、女性においては有意な関連が認められなかった。
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