研究課題/領域番号 |
17J10827
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
北畠 拓也 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | ホームレス / 協働 / 都市 / 東京 |
研究実績の概要 |
平成29年度はホームレス問題解決に向けたセクター間協働のあり方について検討するため、①海外都市での先進的事例の調査と②国内における諸制度の利用状況の調査、③東京都内の路上生活者とホームレス状態の脱却に活用し得る社会的資源に関する地理的なデータベースを作成した。①に関しては、米国ニューヨーク市を対象とし、市担当部局が主導する総勢2500名の市民参加によるホームレス人口調査ストリートカウントの実施状況について、市担当部局へのヒアリング調査及び現地フィールドワーク調査により把握した。本調査は実態調査であると同時に、実施にあたって市やNGO、市民の多様な主体の協働がなされホームレス支援を実施するための基礎的なネットワークを強化するとともに、市民への啓発や支援への参加を促す取り組みとなっていることが明らかとなった。また、競争的資金獲得のためその方法論も洗練されたものになっていた。②では、地域コミュニティや分野横断的なプレイヤーが協働している事例として、大阪市を対象とする調査を行った。市の行政担当部局、生活困窮者自立支援事業受託団体、民間支援団体ら7団体へのヒアリング調査を行い、各主体の連携状況や特にホームレスの人々への地域に根付いた仕事を創出する特徴的な取り組みについてその実施状況を明らかにした。③については、市民団体が実施する路上ホームレス人口調査を元に地理的データベースを構築した。①に関しては、実施した調査を査読付き論文として取りまとめを行い、都市計画学会に投稿を行った(『市民参加型ホームレス実態調査「ストリートカウント」の国際比較研究 ニューヨーク、シドニー、ロンドン、東京の事例を対象として』)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度には①米国ニューヨーク市での市民を含めた多様な主体によるホームレス実態調査の実施状況、②大阪市において生活困窮者自立支援法下でのホームレス支援施策の実施状況と地域コミュニティでの共生のあり方を調査し、成果が得られた。また、③ホームレス状態脱却のための社会資源の投下について検討するためのデータベースを整備した。諸外国の包摂モデルの東京での適用可能性を探るため、構築したデータベースに更に社会資源等の情報を追加した上で試算を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、引き続き諸都市の事例研究を行うとともに、平成29年度に構築したデータベースの充実を図り分析、これらの成果 を元に各分野の主体を対象にアクション・リサーチを実施しその成果をまとめる。事例研究としては、ホームレス支援セクター及びアート等多分野連携の進むロンドン、及び市民発意による資金獲得のための大規模運動「Sleep in the park」を実施するエディンバラを現地視察及び関係者へのインタビュー調査を行う。また、ホームレス支援に関する地理的データベース (都内 のホームレス自立支援施設や各厚生関係施設、民間団体が提供するサービス等の社会的資源を地理的・定量的に記録したもの) を昨年より構築しているが、更なる充実を図る。これに市民団体と共同で実施する夜間路上ホームレス人口調査の結果等を併せ 、諸外国での支援モデルを適用した際の試算を行う。この試算を元に各分野の主体を対象にアクション・リサーチを実施し、その成果をまとめる。前年に実施した試算による代替案を基に福祉セクター(都や各区のホームレス担当部局、都内の民間支援団 体、及び研究者等)や住宅セクター、空間管理セクターを対象にインタビューや議論を繰り返し実施する。 以って、代替案の実現可能性と多分野による連携可能性を明らかにし、そのための技術的難点等を示す。当年後半期には、論文 投稿などの形でこれまでの研究成果をまとめる。
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