研究課題/領域番号 |
17J10853
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
粟飯原 直也 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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キーワード | 薄膜太陽電池 / 励起子発光 / ドナー・アクセプタ対再結合発光 / Cu2Sn_1-xGe_xS3 |
研究実績の概要 |
Cu2Sn1-xGexS3単結晶の発光スペクトルを観測した.6 Kでは,励起子発光DAP再結合発光が観測された. x=0, 1では自由励起子発光と束縛励起子発光が分解できたが,混晶では空間的な組成分布でエネルギーに広がりができこれらの励起子発光を分解できなかった. DAP再結合発光のアクセプター準位は,室温における熱エネルギー(kBT ~ 26 meV)よりも浅いことから,太陽電池特性には影響を与えないと結論付けた.したがって,DAP再結合発光のアクセプター準位が,CTGSのp型化の原因になっていると推測した.また,混晶比変化に対してアクセプター準位がほぼ一定であることを考慮すると,IV族元素(Sn,Ge)が関与しない共通の欠陥を介していると可能性が高いと予想した.ドナー準位に関しては,二つの準位の存在が示唆された.これらはアクセプター準位に比べて深い準位(50 ~ 148 meV)を形成しているため,光励起キャリアの再結合中心となる可能性が高いと結論付けた. 298 Kにて全ての試料からバンド端付近において,励起子発光に比べて非常にブロードなバンド間(BB)再結合発光を観測した.BB再結合発光は混晶比xの増大に伴いブルーシフトしており,混晶化によるワイドギャップ化を示唆していた.スペクトルをフィッティングすることで混晶比変化に対するバンドギャップを決定した.その結果,Cu/(Sn + Ge) ~ 0.72にて単接合型太陽電池に最適なバンドギャップ1.4 eVを実現できることを明らかにした. また,カチオン組成の異なる三つのCTS薄膜における吸収スペクトルの温度依存性を観測した.特に,Cu過剰組成においては,3つのバンド間吸収に伴い励起子吸収ピークが観測され,Γ点にて縮退の解けた三つの価電子帯から,単一の伝導帯へ光学遷移が許容されたものと解釈した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度はCu2Sn1-xGexS3(CTGS)の欠陥準位のエネルギーを評価するために,組成比xに対するバンドギャップを決めることを目的とした.そのために,xを変えた単結晶試料を作製し,励起子発光を観測することで,自由励起子の発光エネルギーと束縛励起子の束縛エネルギーを決定し,これらからバンドギャップを見積もることとした.結果として,励起子発光の観測に成功し,また,各組成xに対するバンドギャップを決定することができた.したがって,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
観測したドナー・アクセプタ対発光をの解析を行った結果,アクセプター準位に関してはIV族元素が関与していない可能性が高いと結論付けることができた.しかし,ドナー準位に関しては起源が不明であり更なる調査が必要となっている.今後はさらにCu/IV比を変えた試料の発光スペクトルの観測や,現有試料の更なる詳しい分析を行い,ドナー準位の起源を明らかにしていく.
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