本年度はCu2Sn1-xGexS3 (CTGS)太陽電池高効率化において必須となる欠陥起源の特定および低減のため、昨年度観測したCTGSバルク単結晶からの発光スペクトルのさらなる解析・考察を行った。昨年度の研究において、ドナーアクセプター対再結合発光のアクセプター準位の起源として、IV族元素が関与しない欠陥を予想したが、他研究グループの理論計算結果からCu空孔が起源であると予想した。また、バンド間再結合発光の解析から、室温298 Kにおいて非常に小さな光学ボーイングパラメータb ~ 0.1 eVを得た。これらの成果をまとめ、米国物理学協会誌AIP Advancesに投稿し、受理された。 また、昨年度と本年度の発光スペクトル解析結果をまとめ、CTGS系における発光および欠陥モデルを作図した。本モデルを基に今後、深いドナー欠陥を低減することでCTGS太陽電池の高効率化が期待できると考えている。また、CTGS系におけるバンドギャップの混晶比依存性は、CIGS太陽電池において重要となっているバンドエンジニアリングによる高効率化技術において基盤となる光学データである。
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