研究課題/領域番号 |
17J10860
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
松本 信圭 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 海馬 / 社会性 / 海馬支脚 |
研究実績の概要 |
本研究では、社会性本能行動に関連した海馬の神経活動を電気生理学的に検討することを目的に研究を進めてきた。 まず、海馬の神経活動の記録方法として、シリコンプローブを用いた大規模記録法を採用した。シリコンプローブでは、最大で512チャネルから神経活動を記録できる。これまでに、シリコンプローブを慢性的に刺入する手術を数匹実施した。そして、海馬の神経活動を記録した。 また、社会性本能行動のアッセイ系として、改変型スリーチャンバー試験を用いた。通常のスリーチャンバー試験では、正方形の部屋が横に三つ並んだ形をとり、その内部を被験動物が自由に動き回ることができるようになっている。その正方形の部屋のうち端の二部屋(またはそのうちの一部屋)については、隅にデモンストレーション用の動物が置かれており、動物が新奇の動物や物体に嗜好性を示す性質を利用して、被験動物の社会性を評価する。本研究においては、通常のオープンフィールド(120 cm四方)の内部を三つの区画に分け、端の一部屋にはデモラットを置くことで、社会生本能行動の評価をおこなった。その際、被験ラットは、提示ラットの周辺により多くの時間滞在する傾向が見られた。同時に、被験ラットにフィールド内を探索させている時の、海馬およびその周辺領域の神経活動の記録もおこなった。 上記と並行して、七方向放射状迷路、直線トラック、T字迷路、オープンフィールドを用いて、空間情報の脳内表象、睡眠中のメモリーリプレイ、作業記憶に関連した神経活動の記録および解析を進めている。特に、放射状迷路に関しては、放射状に伸びたアームに対応した神経活動が得られた。今後は、上記の社会性や作業記憶に対応した神経活動を、海馬体のみならず、海馬体と接続している関連領域からも同時に記録する。これにより、海馬体とその周辺領域において、どのような情報処理がなされているのかを検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリコンプローブを慢性的に留置する過程において、細かなミスがあり、満足のいく例数が稼げなかった。その一方で、社会性をアッセイする行動試験系は確立し、海馬の神経活動を大規模に記録すること、解析手法や組織学的手法を習得することも達成できたため。現在は、最低限の目標である、複数領域からの神経活動の記録を目標に実験を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、海馬体からの記録のみならず、複数領域からの慢性記録を行い、社会性行動ならびに、空間作業記憶や空間表象に対応した神経活動と脳領域間の相互作用について解析を行っていく。そのための検討はすでに終えている。
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