本研究では、社会性本能行動に関連した海馬の神経活動を電気生理学的に検討することを目的に研究を進めてきた。 前年度において、神経活動の記録方法として、シリコンプローブを用いた大規模記録法を習得してきた。シリコンプローブでは、最大で512チャネルから神経活動を記録できる。この技術を用いて、海馬と脳梁膨大後部皮質の神経活動を記録した。 また、前年度に引き続き、社会性本能行動のアッセイ系として、改変型スリーチャンバー試験を用いた。通常のスリーチャンバー試験では、正方形の部屋が横に三つ並んだ形をとり、その内部を被験動物が自由に動き回ることができるようになっている。その正方形の部屋のうち端の一部屋には、隅にデモンストレーション用の動物が置かれており、動物が新奇物体に嗜好性を示す性質を利用して、被験動物の社会性を評価する。本研究では、通常のオープンフィールドの内部を三つの区画に分け、端の一部屋にはデモラットを置き、被験動物の神経活動を記録しながら、被験動物の社会性本能行動の評価をおこない、同時に神経活動の記録をおこなった。 その際、被験ラットの海馬の神経活動は、デモラットがいない時といる時とで発火率および発火位置に軽度の変化が見られた一方で、脳梁膨大後部皮質にはそのような変化は見られなかった。 上記と並行して、七方向放射状迷路における神経活動の解析も進め、放射状のアームにおける外向きと内向きに対する神経活動の差も見出すことができた。
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