IgG4関連疾患では、その病態形成の原因となる真の自己抗原が不明である。これまでの解 析から、1)抗原ラミニン511をマウスに免疫することにより自己免疫膵炎の病理診断基準を満たす膵病変が 誘導されたこと、2)自己免疫膵炎患者血清(10例)の半数において抗原ラミニン511に対する自己抗体が検出されたことより、申請者はラミニン511が自己免疫膵炎真の自己抗原である可能性が高いと考えている。自己抗原が同定できれば、同疾患の病態解明に寄与するのみならず、その抗体の測定法の開発は、本疾患の診断・病型分類・治療方針の決定・治療効果判定、新たな治療方法の開発などに大きく貢献するものと期待される。昨年度は、自己免疫膵炎患者における抗自己抗体の症例数を増やした検証を行い約70例の自己免疫性膵炎患者血清と約100例のコントロール血清で比較し、感度50%、特異度98%と十分で臨床応用可能な結果であった。 今年度は、臨床応用を目的として、市販可能な汎用性のある自己抗体測定法を企業と共同で開発を行った。市販可能な汎用性のある自己抗体測定法には、これまで実験室レベルで使用していた、ELISAのblank well(コントロールwell)を用いない方法で行うことが、実際の検査室では好まれる。しかし、IgG4関連疾患の患者は血清中のIgGが、他の患者さん、健常人と比較し、多いため、blank wellなしの状態では、感度・特異度が下がることが分かった。これらの問題点を解決すべく、ラミニン511のエピトープを絞り、より精度の高い測定法の改良を行っている。また、ラミニン511自己抗体陽性の患者血液から、モノクローナル抗体を作成し、阻害効果として、自己抗体を検出できないか、試みている。 また、あたらたなIgG4関連疾患の診療体系の構築を目指し、自己免疫性膵炎以外の自己抗原の同定を行った。
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