令和2年度は、「物的側面から長期的な復興プロセスを詳細に分析する方法の検討」と「2009年アブルッツォ地震被災都市ラクイラの復興プロセスの評価」、「ラクイラ市を事例とした復興シナリオデザイン手法と計画情報システムの検討」を行うことを目的として、評価・分析を行なった。 第一に、昨年度に確立した物的観点に基づく復興プロセスの科学的分析方法をより詳細な分析方法とするために、保護規制の定められている歴史的中心市街地内の個々の民有建築物に着目した。これらの民有の歴史的建造物は、我が国の町屋建築のように、間口が狭く、壁を共有しており、連続的な街並みを形成している。この歴史的な街並みを震災後も保全するために、1つの構造的なまとまり構築する歴史的建造物群を最小事業介入単位として、復興事業が進められる。この復興事業は、平時の都市計画制度において建築類型学を用いて定められた保存事業カテゴリーの分類に従って、復元や修復、再建などの協調型保全事業が実施される。また、近年の震災復興では、歴史的中心市街地の城壁周辺部の地区再生を目的とした官民連携の開発事業が計画されている。そのため、保存事業カテゴリーの定められた建造物群の保全事業と周辺部の地区を対象とした開発事業の再建プロセスの分析を行うこととした。 第二に、ラクイラの復興プロセスを本研究課題で開発した物的・社会的観点に基づく科学的な詳細分析方法を用いて評価した。この分析により、1)復興の体制を多様化させ、強化し続けることの重要性、2)中間支援組織の早期設立の重要性、3)市民参型の公募事業の重要性、の3つの重要な知見を得ることができた。 第三に、上記で行なったラクイラの復興プロセスの評価結果を用いて、「ラクイラ市を事例とした復興シナリオデザイン手法と計画情報システムの検討」を行なった。
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