研究実績の概要 |
本研究では、酵素を模倣した二座硫黄架橋配位子を有するロジウム二核錯体の合成及び水の光還元反応における水素発生触媒能を調査する事を目的としている。具体的には、thiophenolや1,2-benzenedithiol等の二座硫黄架橋配位子を有するロジウム二核錯体を開発し、実験と理論計算の双方から水の光還元反応における水素発生触媒能を調査する事を目指している。更には、光増感剤連結型超分子金属錯体を開発し、イリジウム光増感剤からロジウム錯体への効率的な電子移動が可能な金属錯体の開発を目指す。初年度である平成29年度は、二座硫黄配位子を有するロジウム錯体の開発及び構造解析を目的として研究を行なった。ロジウム二核骨格に対して二座配位が可能なSodium thiophenolateをPaddlewheel型、Anchor型、Half-Paddlewheel型ロジウム二核錯体及び以前に報告を行ったPaddlewheel型ロジウム二核錯体を合成する際の中間体であるロジウム四核錯体に反応させた所、いずれのロジウム錯体を使用した場合においても茶色の結晶性錯体が得られた。一方で、1,2-benzenedithiolや1,3,5-benzenetrithiolをPaddlewheel型ロジウム(II)錯体に反応させた所、配位高分子構造を形成している事が単結晶X線構造解析から明らかになった。また、光増感剤連結型超分子錯体の前駆体として、シクロメタレート型イリジウム錯体を多数開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酢酸ロジウム二核錯体[Rh2(O2CCH3)4]、Half-Paddlewheel型ロジウム二核錯体[RhCl(O2CCH3)(bpy)]2 (bpy = 2,2'-bipyridine)、Anchor型ロジウム二核錯体[Rh2Cl2(O2CCH3)(tpy)2]Cl (tpy = 2,2':6',2''-terpyridine)、ロジウム四核錯体[RhCl(O2CCH3)]4にSodium thiophenolateを脱気条件下で反応させた所、いずれのロジウム錯体においても茶色の結晶性粉末を得た。得られた茶色粉末は、1H NMR、ESI-MS、元素分析、FT-IRによって同定を行った。一方で、1,2-benzenedithiolをPaddlewheel型ロジウム二核錯体に反応させた場合では、配位高分子が得られる事が単結晶X線構造解析から明らかにした。つまり、硫黄配位子の種類によって得られる構造が劇的に異なる事が明らかになった。 更に、光増感剤連結型超分子錯体の前駆体として、多数のシクロメタレート型イリジウム錯体を開発した。合成は、既報の合成法に加え、鈴木―宮浦クロスカップリングを用いた合成後修飾法によって行った。これらのイリジウム錯体は、単結晶X線構造解析により構造の決定に成功している。以上の結果から、おおむね順調に進展していると判断した。
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