研究課題/領域番号 |
17J11022
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
青木 祥 沖縄科学技術大学院大学, 神経生物学研究ユニット, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 動機づけ / 線条体 / ドーパミン |
研究実績の概要 |
本研究は、1)社会的行動への動機付けの神経基盤の解明と、2) 幼少期の社会的経験と成年期の適応的行動との関連性の解明を目的とする。実験動物として、幼少期に社会的行動が観察され、かつ成年期の適応的行動の評価に適した齧歯類(ラット・マウス)を対象とする。 平成29年度は主に、内的な動機付けを実際の行動として出力するための候補となる神経回路を探索する実験を行った。具体的には、社会的行動を含め動機付け全般に関与する大脳基底核・線条体およびドーパミン系に着目し、線条体がどのように行動を生み出す大脳皮質一次運動野や二次運動野に出力するのかについて神経解剖学的手法を用いて調べた。その結果、線条体の亜領域に分別して、背外側、背内側、腹内側および尾側の領域において、3シナプス性に運動野へ出力するニューロンを発見した。これらの新たに発見された神経回路は、社会的行動の動機づけを実際の行動出力に変換する神経基盤の有力候補といえる。今後は、これまでに得た解剖学的知見についてその証拠を固める追加実験・解析を行うとともに、これらの神経回路が有する生理学的意義について検証する。また、線条体とドーパミン系の解剖学的構造についても詳細を調べていく予定である。 同時並行的に、幼少期の社会的経験がどのように成年期以降の適応的行動に影響を与えるのか調べるために、ラット、マウスを対象とした適応的行動を評価する行動実験パラダイムを構築した。今後、幼少期の社会的経験を実験的に操作し、成熟後の適応行動に及ぼす影響を検証していく。 これらの研究により、社会的行動を含めた動機づけに関与する神経回路・解剖学的構造を明らかにするとともに、これらの神経回路の生理学的意義を解明していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおよそ研究計画通りに研究が進んだため。 特に、社会的行動を含めた動機づけ全般に関わるドーパミン細胞から入力を受ける線条体において、行動出力を担う大脳皮質運動野へ連絡できるニューロン群を発見できたことは、今後の研究計画の遂行において基盤となる解剖学的知見となる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、1)社会的行動を含めた動機付けに関わる大脳基底核線条体が行動を生み出す大脳皮質運動関連領域へと出力する神経回路について異なる手法で再現すること、2) 線条体から大脳皮質前頭前野への神経連絡を明らかにすること、3) 線条体とドーパミン系の入出力関係の解剖学的構造を再考すること、4) これらの神経回路がもつ社会的行動への生理学的意義を検証すること、5) 幼少期の社会的経験の有無が成年期の適応的行動に及ぼす影響を調べること、これら一連の実験を進めていく予定である。
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