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2018 年度 実績報告書

社会的な遊びへの動機づけを担う神経機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17J11022
研究機関沖縄科学技術大学院大学

研究代表者

青木 祥  沖縄科学技術大学院大学, 神経生物学研究ユニット, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2017-04-26 – 2020-03-31
キーワード動機づけ / 線条体 / 行動
研究実績の概要

本研究課題は、社会的行動への動機付けの神経基盤の解明と、幼少期の社会的経験と成年期の適応的行動との関連性の解明を目的とする。前年度までに、内的な動機付けを実際の行動として出力するための候補として、社会的行動を含め動機付けに関与する腹側線条体から大脳皮質一次運動野への多シナプス神経回路を発見した。しかしながら、同回路は複数のシナプスを介しているために、どのような経路を通して腹側線条体からの出力は皮質運動野に到達するのか、その回路メカニズムは明らかではなかった。

本年度は、遺伝子改変およびウイルスベクターによる介入が容易であるマウスを用いて、そのメカニズムを探った。単シナプス限定的な狂犬病ウイルスを用いて腹側線条体から視床への解剖学的構造を調べたところ、腹側線条体が黒質を通して運動性視床核に2シナプス性の連絡を有することを発見した。続く実験において、腹側線条体は内側の黒質に投射することを同定した。これらの結果を考慮すると、腹側線条体が皮質運動野に到達する経路として、腹側線条体―内側黒質―運動性視床核―皮質運動野というこれまで同定されていなかった回路が有力候補であることが分かった。さらに、光遺伝学的手法と急性スライス標本を用いた電気生理学記録実験を組み合わせて、運動性視床核へ投射する黒質ニューロンに対して腹側線条体が抑制性のシナプス入力を有することを証明した。これらの新知見は、社会的な文脈も含めて内的な動機づけが実際に行動出力できる脳領域・皮質運動野に到達するためには、腹側線条体―内側黒質―運動性視床核―皮質運動野という経路が機能している可能性を示唆している。また同時並行的に、マウスの手続き学習を題材として成年期の適応的行動を測定できる行動実験課題を確立した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度の結果および研究計画に基づいて研究が進捗しているため。特に、社会的文脈を含めた動機づけの情報が運動関連領域に行きつく過程・メカニズムを解明したことで、この回路が実際に生体内、特に行動中にどのような機能を果たしているのかを調べることが可能になった。また、上述した実験のほかに、線条体と腹側被蓋野(VTA)のドーパミンニューロンとの解剖学的関係性を検証した結果、動機づけに関わる腹側線条体のみならず、運動制御に関わる背側線条体に対してもVTAのニューロンが投射することが分かった。VTAは腹側線条体からシナプス入力を受けていることから、腹側線条体は黒質および運動性視床核を介した多シナプス神経回路を通して皮質運動野に連絡するだけでなく、VTAのドーパミンニューロンを介して背側線条体に連絡することで行動・運動出力を制御できる可能性が示された。この知見は、社会性を含めた内的動機づけの情報が腹側線条体から出力され実際の行動出力に影響を及ぼす際には、少なくとも2通りの経路で、運動関連領域(皮質運動野あるいは背側線条体)に到達できることを示唆しており、最終年度の神経回路の機能を研究する実験において不可欠な情報となった。

今後の研究の推進方策

電気生理学的手法を用いて、内的動機づけを出力する腹側線条体から皮質運動野へ繋がる神経回路について生体内における機能を調べる。また、マウスの行動実験によりこれまでに同定された神経回路が社会的行動を含めた動機づけの情報を行動出力に反映させる回路メカニズムを調べる。さらに、幼少期の社会的経験が成年期の適応的行動に及ぼす影響について検証するため、幼少期の社会的経験を行動学的に操作する、あるいは社会的行動に障害が見られる遺伝子改変マウスを用いることで、その意義を明らかにする。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Salk Institute for Biological Studies(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Salk Institute for Biological Studies
  • [国際共同研究] Erasmus Medical Center(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      Erasmus Medical Center
  • [雑誌論文] Multizonal cerebellar influence over sensorimotor areas of the rat cerebral cortex2019

    • 著者名/発表者名
      Sho Aoki, Patrice Coulon, Tom J.H. Ruigrok
    • 雑誌名

      Cerebral Cortex

      巻: 29 ページ: 598-614

    • DOI

      10.1093/cercor/bhx343

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Cerebellar modules and their role as operational cerebellar processing units2018

    • 著者名/発表者名
      Richard Apps, Richard Hawkes, Sho Aoki, Amanda M. Brown, Gang Chen, Timothy J. Ebner, Philippe Isope, Elizabeth P. Lackey, Charlotte Lawrenson, Bridget Lumb, Martijn Schonewille, Roy V. Sillitoe, Ludovic Spaeth, Izumi Sugihara, Antoine Valera, Jan Voogd, Douglas R. Wylie Tom J.H. Ruigrok
    • 雑誌名

      The Cerebellum

      巻: 17 ページ: 654-682

    • DOI

      10.1007/s12311-018-0952-3

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Cholinergic interneurons in the rat striatum modulate substitution of habits2018

    • 著者名/発表者名
      Sho Aoki, Andrew W. Liu, Yumiko Akamine, Aya Zucca, Stefano Zucca, Jeffery R. Wickens
    • 雑誌名

      European Journal of Neuroscience

      巻: 47 ページ: 1194-1205

    • DOI

      10.1111/ejn.13820

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Linking emotion to motion: novel interaction across “limbic” and “motor” cortico-basal ganglia loops2019

    • 著者名/発表者名
      Sho Aoki
    • 学会等名
      OIST workshop: Neural Circuits for Motor Behavior
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Multiple viral tracings reveal an anatomical hierarchy in cortico-basal ganglia loops2018

    • 著者名/発表者名
      Sho Aoki, Jared. B Smith, Masakazu Igarashi, Patrice Coulon, Jeffery R. Wickens, Xin Jin, Tom J.H. Ruigrok
    • 学会等名
      Society for Neuroscience 2018
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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