研究課題/領域番号 |
17J11031
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
森田 聖太郎 横浜国立大学, 環境情報学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 表面修飾 / スラリー / その場固化成形 / マルチスケール構造制御 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、成形体中の多成分粒子の集合構造(ミクロ構造)や粒子の充填構造(メゾ構造)、成形体の形状(マクロ構造)のマルチスケールで構造制御できる粉体プロセスの構築を目的としている。この目的達成に向けて、当該年度は、粒子への吸着性、非水溶媒への親和性、固化剤との反応性を付与した多機能表面修飾剤の設計、多機能表面修飾剤による単成分系スラリーの分散化、固化剤によるスラリー構造の成形体への反映を試みた。多機能表面修飾剤の設計については、非水系溶媒中でポリエチレンイミン(PEI)に各種の脂肪酸またはアニオン性界面活性剤を配位させる手法を検討した。アリル基を有するメタクリル酸、アクリル酸、ウンデシレン酸では会合体の形成は確認されなかったが、ポリエチレングリコール鎖末端に不飽和結合を有するアニオン性界面活性剤を用いた場合には、会合体を形成することが認められた。得られた会合体をアルミナ微粒子に飽和吸着させ、トルエン中に高濃度分散させたスラリーの流動特性を評価したところ、せん断速度の上昇過程と下降過程でみかけ粘度にヒステリシス性がない粘度曲線が得られ、良好な流動性を示すことが分かった。このスラリーにアクリル樹脂を加えて紫外光を照射したところ、スラリーが硬化した。また、PEI-オレイン酸(OA)会合体で分散化したアルミナ微粒子/α-テルピネオール系スラリーにおいて固化挙動を体系的に検討したところ、PEIに配位させるOA量、多機能修飾剤の構造、スラリーの粒子濃度、スラリー中の固化剤量によって固化挙動を制御できることも明らかにした。開発したスラリーから形状(マクロ構造)を付与した成形体の作製にも成功し、分散化したスラリーの構造を成形体に直接反映されていることも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度では、無機微粒子への吸着性、非水系溶媒中への微粒子の分散安定化、各種の粒子材質・溶媒への汎用性、固化剤との反応性を有する多機能性修飾剤を調製することができた。また、多機能修飾剤を用いた単成分濃厚系スラリーの流動特性、固化剤によるスラリーの硬化挙動制御、成形体へのスラリー構造の反映(メゾ構造制御)や形状付与(マクロ構造制御)にも成功した。このように申請時に予定していた多機能性修飾剤の調製、単成分系における表面設計やメゾ/マクロ構造制御を達成している。また、開発したスラリーを用いて次年度に予定している多成分系スラリー中の微粒子集合構造(ミクロ構造制御)や成形技術(メゾ/マクロ構造制御)に関わる予備実験に着手しており、本研究課題は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では表面設計した単成分系スラリーを用いて紫外レーザー走査方式による複雑形状への成形に取り組む。また、設計した多機能表面修飾剤を用いて多成分系スラリーの粒子集合構造制御(ミクロ構造制御)を実施し、鋳込み成形等によって得た成形体を観察することでそのミクロ構造を評価する。 次々年度ではこれらの要素技術を統合し、ミクロ構造制御された多成分系スラリーをその場固化させることで、そのミクロ構造を成形体に直接反映させながら、粒子の充填構造(メゾ構造)や成形体の形状(マクロ構造)を制御し、マルチスケールな構造制御を試みる。また、多機能表面修飾剤に吸着性、分散性、固化機能以外の機能をさらに付与することで、高度な粉体成形プロセスを開発する。
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