研究実績の概要 |
申請者は平成29年度に“近赤外吸収色素DPc-Cl(1,4,8,11,15,18,22,25-octabutoxy-2,3,9,10,16,17,23,24-octachlorophthalocyanine)を用いた近赤外光誘起電子移動反応の反応メカニズムに関する検討”及び“DPc-Cl金属錯体の合成と光反応性評価”という2つのテーマを実施した.前者に関しては,新規に発見した近赤外光誘起電子移動反応系に関して詳細な反応解析を行い,光誘起電子移動反応が動的消光過程を経由して進行していることを明らかにした.この成果は動的消光過程による光誘起電子移動反応が近赤外光を駆動力としても達成できることを世界で初めて実証した例であり,申請者が第一著者としてまとめた論文が国際紙に掲載された(J. Chem. Phys. Accepted.).後者に関しては,申請者のこれまでの研究で得られた近赤外光誘起光電子移動系を発展させるべく,DPc-Cl骨格中に反応活性中心を導入した新規錯体DPc-Cl-Ptの合成及びその光化学的物性の評価を行った.光安定性試験や過渡吸収測定などの結果から,DPc-Cl-Ptが優れた光化学的特性を有していることを明らかにした.また,適切な反応条件を用いることで,DPc-Cl-Ptが近赤外光に応答して化学反応を起こすことを見出した.本年度に得られた成果に関して,国内学会で1件のポスター発表(ポスター賞受賞),及び2件英語口頭発表を行った..
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