研究課題/領域番号 |
17J11084
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
度会 晃行 麻布大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 母性行動 / 視床室傍核 / 内側前頭前皮質 / オキシトシン / 養育放棄 |
研究実績の概要 |
視床室傍核(PVT)にはオキシトシン受容体が発現していることが報告されていたが、吻尾側に長いPVTのどの位置にオキシトシン受容体がどのように発現しているのか明らかにされていなかった。そこで、申請者はオキシトシン受容体に蛍光タンパクが付与されたトランスジェニックマウスを用いて、PVTにおけるオキシトシン受容体の発現分布を観察した。PVTにおけるオキシトシン受容体はPVT全域にその発現が確認され、後方の領域ではその発現数が優位に増えていた。そこで、後方のPVTにマイクロかニューラを留置し、養育中の母個体のPVTにオキシトシン阻害薬を投与し、その後の養育行動を観察した。オキシトシン阻害薬または生理食塩水をPVTに投与したいずれの場合においても、母個体の養育行動が変化することはなかった。そこで、申請者は新たに薬剤の慢性投与が可能となるAlzet pumpシステムを導入し、養育中の母マウスのPVTへのオキシトシン阻害薬の慢性投与を行なった。現在、その例数が限られているものの、オキシトシン阻害薬を慢性投与された母個体の養育行動は減少傾向を示した。 また昨年度はPVTへ投射する神経領域を特定し、通常の養育期間を過ごした母個体と養育行動が減少した母個体のその領域における神経活性を比較した。逆行性神経トレーサーを用いた実験により、PVTは主に内側前頭前皮質(mPFC)から当社を受けていることを明きらかにした。養育期間中に社会的ストレスを加えられることで養育行動が減少した母個体はmPFCの神経活性が高く、mPFCにおけるその活性化細胞とトレーサーによって標識された投射細胞が一致することがわかった。これらのことから、mPFCからPVTへ投射される神経回路が活性化することによって母個体の養育行動が減少すると予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視床室傍核(PVT)における、母性行動の減少をもたらす神経基盤の候補を挙げることを予定していた。 昨年度、申請者はPVTにおけるオキシトシン受容体に対する遮断操作によって養育行動を減少させた他、母性行動が減少した個体の内側前頭前皮質(mPFC)からPVTへ投射する神経回路の活性化していることを示した。これらの結果は、PVTにおける母性行動の減少をもたらす神経基盤としてオキシトシン入力の減少とmPFCからの入力亢進が生じている可能性を示すことができている。したがって、予定していた神経基盤の候補を挙げることに成功しており、概ね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
母性行動が減少した個体の内側前頭前皮質(mPFC)から視床室傍核(PVT)へ投射する神経回路の活性化が生じていることを示した。そこで今後の推進方策として2つの課題を予定している。
課題①:養育中に社会的ストレスに曝露された際のmPFC-PVT回路における神経活性のリアルタイム計測 課題②:mPFC-PVT回路の人為的増強による母性行動減少の再現
mPFC-PVT回路における神経活性のリアルタイム計測についてはファイバーフォトメトリーによって行うことを予定している。ファイバーフォトメトリーを行うためには数種のウイルスを組み合わせるか、特定のウイルスと遺伝子改変動物を組み合わせる必要がある。本年度は本研究を行う上で最も適した組み合わせを見つけるとともに、実際に計測に着手することを目標としている。
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