研究課題/領域番号 |
17J11171
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
坂田 茉実 横浜国立大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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キーワード | 転倒リスク評価 / ライトタッチコンタクト / 感覚刺激制御 / 感覚モデル |
研究実績の概要 |
近年,高齢者の転倒事故が社会問題となっており,転倒リスクを抱える高齢者数の増加が大きな要因である.しかしながら,加齢によって増加する転倒リスクの機序は明らかにされていない.本研究の目的は,[1] 先行研究によって提案された仮想的な壁により立位状態を安定させる方法論(VLTC)の原理解明を目指したVLTC型身体モデルと[2]内在する感覚系のモデルの2つによって身体と感覚の両面から転倒リスクを評価する新しいモデルの提案である.今年度は主に,感覚系の重み調整の能力を定量的に評価するモデルの提案を行った.具体的にはまず立位に関わる3感覚系の見える化を目指し,Wavelet解析を用いたSensory Visualization法の提案を行う.そしてVLTCによる仮想壁の切り替えで姿勢動揺を誘発する大規模実験の結果から,仮想壁の切り替えに対する各感覚系の変化や加齢変化に対して評価を行うことでSensory Visualizationの検証を行った.そして3感覚系バランスの評価・モデル構築のため,3感覚系に刺激を与える計測を行う方法論の構築を行った.システムではHMDでの視覚刺激,電気刺激を用いた前庭刺激,足首への振動刺激や仮想壁等の体性感覚刺激法を構築し,各刺激を組み合わせることで各感覚系に刺激を与えて被験者の姿勢動揺を誘発する.各感覚系刺激に対する姿勢動揺のデータを用いてSensory Visualizationの違いを評価し,感覚重みバランスを係数比と仮定した感覚バランスレーダーを検討している.また各感覚刺激とVLTCによる仮想壁を組み合わせることで,感覚刺激におけるVLTCの効果の検討を行い,VLTCの原理解明に向けた感覚面からの評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本計画では,転倒リスクの評価に向けた感覚・身体モデルを行うことが目的である.今年度は,感覚系の重み調整の能力を視覚的に評価する手法の提案を行った.この手法に関しては,これまでに200名以上に対して行った大規模実験のデータから転倒歴等の情報と比較を行うことで提案手法の有効性を示しつつある.さらには3感覚系バランスの評価・モデル構築を目的とした方法論を確立し,各感覚系刺激に対する感覚系の重み調整の能力の評価のみでなくVLTCの原理解明に向けた感覚面からの評価を行った.これらは次年度以降の研究計画を支える手法であり,これらのことからも想定以上の進捗や今後の発展が期待される.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,身体モデルでシミュレーションを行うことでVLTCが立位姿勢に及ぼす影響を解析する.立位に関わる筋群のHillの筋モデルとAnyBodyを利用した筋骨格系モデルを構築する.そして入力データとしてモーションキャプチャシステムで計測したVLTC時のヒトの立位動作のデータを利用することで,そのときの筋骨格系の状態変化,関節トルク,姿勢変化を評価する.この結果を利用して倒立振子モデルを利用した立位制御モデルを構築し,モデルパラメータの変化がどのように身体に影響を与えるか評価することにより,身体系の制御能力を定量的に評価できる方法を確立する.二足歩行ロボットに構築した制御モデルを導入することでモデルの検証を行う.これにより,身体と感覚の両面から転倒リスクを評価する新しいモデルの提案を目指す.
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