研究実績の概要 |
本研究では、破骨細胞の分化や活性に関連する遺伝子改変メダカの作製と、鰭の骨折修復過程を経時的に観察できるメダカ骨折修復モデル(Takeyama et al., Dev Biol 2014)を基盤として未知なる骨吸収機構の存在を明らかにすることを目的としている。申請者は、無重力環境下における骨吸収活性化に対してグルココルチコイドシグナルの関与が示唆されていること(Chatani et al., Sci Rep 2015 , Chatani et al., Sci Rep 2016)、またグルココルチコイドの骨に対する生理学的・病理学的作用は十分に解明されていないという研究背景から、グルココルチコイドが骨代謝に及ぼす影響に注目した。前年度は、メダカへのグルココルチコイド製剤慢性投与が、骨代謝の盛んな咽頭歯骨(Mantoku et al., Dev Biol 2016)で濃度依存的に骨代謝異常を引き起こすことを明らかにした。本年度は、グルココルチコイド製剤やグルココルチコイド関連遺伝子が、破骨細胞や骨芽細胞の動態および活性に与える影響を調べるために、以下の点について解析を進めた。 ①グルココルチコイド製剤が骨折修復に与える影響の解析 骨折修復時に骨折部位へ動員される破骨細胞と骨芽細胞はグルココルチコイド製剤の慢性投与により有意に減少し、骨修復に障害が生じたことから、慢性投与が両細胞に対して抑制的に作用することが示唆された。一方、急性投与では破骨細胞のみ有意に減少したことから、グルココルチコイド製剤は破骨細胞の動員を抑制する可能性が示唆された。 ②骨折修復におけるグルココルチコイド関連遺伝子の機能解析 人工RNA(CRISPR-Cas)を用いたゲノム編集技術によりグルココルチコイド関連遺伝子が欠損したメダカを作製した。このメダカの骨折部位に動員される破骨細胞と骨芽細胞は野生型と比較して有意に増加したことから、このグルココルチコイド関連遺伝子が骨折修復において両細胞の動態を制御している可能性が示唆された。
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