本研究ではアキラル三量体液晶が形成するナノ秩序の構造解明、その固定化、さらに光刺激によるナノ構造制御の方法論の開発に取り組んだ。その結果、以下の顕著な成果を得た。 1.設計合成した三量体液晶によるダークコングロメレート(DC)相のナノ構造を原子間力顕微鏡(AFM)および透過型電子顕微鏡(SEM)で観測した。その結果、空気―液晶界面では空孔がハニカム状に規則正しく配列したジャイロイド型のキュービック構造から構成されているが、一方、内部はスポンジ状であることがみられ、試料の内部と表面のナノ構造は明らかな違いがみられた。表面の分子密度が試料の内部に比べてより高くなることで段階的な転移が引き起こされているためだと考えられる。このようなジャイロイド型のナノ構造は従来のDC相においてはみられず、新規なナノ構造であるといえる。 2.この三量体液晶にアゾベンゼンを導入し、光刺激による構造変化を調べた。アゾベンゼン基含有の三量体はDC相を形成し、またそのDC相において光照射による可逆的なキラリティースイッチが起こることを観察した。これは分子間相互作用由来のコンフォメーション変化で説明している。また、このアゾベンゼン基含有三量体を上記で用いたジャイロイド構造を形成するDC相を発現する三量体化合物と混合させ、DC相においてUV照射を行うと、同様なキラルスイッチングがみられた。この過程を経た混合物の試料内部構造をSEMで観察すると、比較的秩序だった空隙をもつナノ構造がみられた。UV照射を行わないサンプルの内部構造はランダムなスポンジ構造をしていることから、ナノ構造は光刺激によって秩序化されたと考えられ、ナノ構造を制御する知見が得られた。 上記の研究成果は、それぞれ Soft MatterおよびChemistrySelectにて出版発表された。
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