研究課題
本研究では弾性抵抗測定を用いたネマティックゆらぎの評価[1]及びピエゾ素子を複数個組み合わせた精密一軸歪み制御装置の開発[2]を進めててきた。[1]BaFe2S3は鉄原子が梯子状に並ぶ結晶構造を持つ擬1次元物質であり、高圧下において最初に超伝導が報告された鉄系梯子型化合物でもある。このような次元によらず発現する鉄系超伝導の機構を理解する上で、低次元電子状態の解明は重要課題といえる。BaFe2S3は110 K程度の温度でストライプ型の反強磁性転移を示すが、それよりもはるかに高温の200 K付近において電気抵抗率の温度依存性がわずかに変化するT*異常と呼ばれる電子状態変化の兆候が存在する。本研究ではこのT*異常の起源解明のため一軸歪みに対する電気抵抗の応答を調べる弾性抵抗測定法によりネマティックゆらぎの評価を行った。弾性抵抗率の温度依存性からは低温側の磁気ゆらぎに加え別のゆらぎが存在しT*異常において電子相転移が起こっていることを示唆する結果を得た。本成果について国内学会及び国際会議アメリカ物理学会において発表しており、近く論文投稿を行う予定である。[2]上記[1]の研究では一軸歪みはピエゾ素子に直接試料を貼り付けることにより導入されるが、到達歪み量は0.01%程度のオーダーであり歪みの摂動的応答評価にとどまる。近年ドイツドレスデンのマックスプランク研究所のグループは複数のピエゾ素子を組み合わせた一軸歪み制御装置を開発しており、同グループと鉄系超伝導体FeSeの一軸印加実験を共同研究として行っている。また上記[1]の研究と並行して独自の一軸歪み制御制御装置を開発にも着手しており、最大1%程度に達する圧縮歪みを加える性能を有する装置開発に成功している。今後この装置を用いて広く一軸圧下電子相図の研究を推進することが期待される。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Nature Communications
巻: 8 ページ: 1143
10.1038/s41467-017-01277-x