研究実績の概要 |
2018年度は霞ケ浦西浦の4地点(St. 3, 7, 9, 12)において底生大型無脊椎動物であるオオユスリカ幼生と貧毛類及び懸濁態有機物の炭素安定同位体比の時空間変動を調べ,両底生生物に対するメタン由来炭素(MDC)の貢献度を2餌資源1同位体混合モデルを用いて見積もった.その結果,オオユスリカ幼生に対して,St. 3およびSt. 9では高いMDCの貢献度が見られ,それぞれ最大で38% (9月),38% (11月)を示した.一方,St. 7およびSt. 12ではMDCの貢献度は通年,ほとんど無視できるレベルであった.貧毛類に対するMDC貢献度は,St. 3では通年10%程度を示したが,冬季にのみ非常に高い貢献度を示した(~32%).St. 9においては4月に最大値16%を示した後,夏季から秋季では一定の値を維持し,冬季にかけて低下する傾向を示した.St. 7においては通年低い貢献度であったものの,夏季では3.4±0.9%と,オオユスリカ幼生では見られなかった貢献度を示した.一方,St. 12においてはほとんど無視できる程度の貢献度であった.以上の貢献度を,底泥の組成(St. 3とSt. 9;泥,St. 7;泥~砂,St. 12;砂)によって分けてみると,MDC貢献度は底質の環境傾度に沿って変動していることが示唆された.オオユスリカ幼生に関しては,泥で最も高く,砂が混じるような環境ではMDCの貢献はほとんど見られなくなった.一方,貧毛類に関しては,驚くべきことにMDC貢献度の中央値はオオユスリカ幼生に匹敵する値を示した.また,砂交じりの底質においても,オオユスリカ幼生とは異なり,数%程度のMDC貢献度を示した.以上のことから,底質環境は底生大型無脊椎動物へのMDC貢献度を変化させ,浅い湖沼生態系の炭素循環に影響を及ぼすことが示唆された.
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