研究課題
霞ヶ浦において,魚類へのメタン由来炭素(MDC)の貢献度を見積もった.魚類は湖内5地点で採集された個体を対象に,炭素安定同位体比を測定した.MDC寄与率の推定には2餌資源1同位体混合モデルを用い,懸濁態有機物とメタン酸化細菌を餌資源と仮定した.MDC寄与率推定に用いる懸濁態有機物の炭素安定同位体比は2014年から2018年の平均値を用いた.メタン酸化細菌の炭素安定同位体比は,霞ヶ浦底泥中メタンの実測値(-69.7±4.5‰)と,メタン資化に伴うメタン酸化細菌の同位体分別(-16‰)を用いて計算した.また,魚類の同位体分別係数は栄養段階が二つ上がると仮定して+1.6‰とした.餌資源に占めるメタン酸化細菌の割合をMDC寄与率とした.解析の結果,魚類に対するMDC寄与率は0~21.5%の範囲で変動し,平均は0.50%を示した.MDC寄与率は採集地点および採集月(季節)間で明確な違いは認められなかった.魚種別でみると,ニホンウナギが最も高い値を示し,次いでハクレン,ゲンゴロウブナと続いた.食性別にMDC寄与率を見ると,雑食性,雑食からプランクトン食性を示す魚類に比較的高いMDC寄与率を示す個体が多い傾向にあった.一方プランクトン食性であるハクレンや,魚食性であるオオクチバスなどは全体として低い値を示しているものの,少数の個体が突発的に高いMDC寄与率を示すなど,食性だけでは一貫したMDC寄与率の説明ができないことが示唆された.湿重量とMDC寄与率の関係から,多くの魚種において,湿重量が小さいほどMDC寄与率が高くなる傾向が見られた.このことから,成長初期段階においてMDCは重要な餌資源である可能性が示唆された.一方,ある魚種においてはMDC寄与率と湿重量に明確な関係は見られなかった.これらの魚種は全ての成長段階を通じて餌資源としてMDCを利用している可能性が考えられた.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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