研究課題
遺伝性腎炎 Alport 症候群は腎糸球体基底膜を構成する Type IV collagen の遺伝子変異によって発症する遺伝性腎疾患である。小児で発症し,重症例では10代後半から20代に末期腎不全を余儀なくされることから,厚生労働省の指定難病に登録された重篤な疾患である。新規治療薬の開発は急務である。そこで、これまでの検討から、新たな治療標的として、原因そのものを正常化すること、病態進行過程に腎組織でみられる代謝異常が標的となり得ることを示唆してきた。原因タンパク質である Type IV collagen の機能不全が Alport 症候群の根本的な原因であることから、Type IV collagen の機能に対する遺伝子変異の影響を簡便に評価することができれば、原因に基づく新たな治療薬が開発できると考えた。その結果、原因タンパク質 Type IV collagen を正常化する化合物の探索に必要なハイスループット評価系の構築に成功した (Omachi et al., Cell Chem Biol. 2018)。現在、本評価系を用いた化合物スクリーニング系をセットアップ中であり、完了次第、原因を正常化する活性を有する化合物の探索を行う。また、腎組織における代謝異常の正常化による治療効果についてはモデルマウスを用いて検討中である。これら標的の妥当性をさらに検討するべく,iPS 細胞から腎オルガノイドを作製し,新たな評価系の構築を行っている。現在、Alport 症候群患者から iPS 細胞の樹立が完了し、正常型 iPS 細胞, Alport 患者 iPS 細胞から腎オルガノイドを作製し、その分化効率等を腎臓の各細胞マーカーの発現により評価しているところである。また、正常型 iPS 細胞, Alport 患者iPS 細胞がともに腎オルガノイドへ分化することをすでに確認した。
3: やや遅れている
iPS 細胞から腎オルガノイドへの分化には成功したものの、その分化効率はそれほど高くなかったため、現在、より最適な分化プロトコルを検討中である。
これまでの iPS 細胞から腎オルガノイドへの分化効率を考慮し、より最適な分化プロトコルを再検討する。最終的に、腎オルガノイドをマウス腎組織へ移植し、さらに腎オルガノイドを成熟化をさせることも試みる。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
Cell Chemical Biology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
https://doi.org/10.1016/j.chembiol.2018.02.003