研究実績の概要 |
平成29年度に引き続き、L-HIPPOまたはIP6とMAの結晶構造解析を行った。L-HIPPO-MAについては、得られていた結晶化条件に改良を重ねることにより、高分解能の結晶を得ることに成功した。現在、この結晶の測定を終え、L-HIPPOの結合様式を解析中である。MA-IP6については2条件で結晶を得ることに成功しており、解析を進めた結果、MA蛋白質が3量体を形成し、その周りにIP6が結合していた。IP6の結合様式は、本来MAと結合するPIP2の結合様式と少し異なっていることが判明した。さらに、スタンフォード大学のHasan DeMirci博士らとの共同研究によりCiftci博士とともにIP6-MAの微結晶を作成しシリアルフェムト秒結晶構造解析(Serial Femtosecond X-ray Crystallography, SFX)に成功した(H. I. Cifci, H Tateishi, et al, International Journal of Molecular Sciences, 2019)。SFXにより得られた結晶の構造も解析中である。またDSF解析の結果から、IP6はMA蛋白質を安定化する作用があることを昨年報告したが、この安定化は多量体形成によるものであると予想している。そこで現在は、SEC-MALSやSEC-SAXS、クロスリンク剤などを使用して多量体形成に関して検討を行なっている。リン酸基をもつ化合物のプロドラッグ化としてプロドラッグ体IP6の合成に成功した(論文投稿中)。本研究はL-HIPPOのプロドラッグ化につながると考えられる。
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