初年度は、国立科学博物館に収蔵されている鳥類の骨格標本75種の観察および計測を行った。その結果、原始的なグループでは、頸椎数は種間変異が大きく、胸椎数は安定的であることが確認された。一方で、派生的なグループでは、頸椎数だけでなく胸椎数も種によって異なることが明らかとなった。特に多くの水鳥から構成されるAequorlitornithesというクレードでは、頸椎数は種ごとに大きく異なるにも関わらず、頸椎と胸椎の総数はほぼ一定であった。すなわち、このグループでは、頸椎が増加した場合は胸椎数が減少し、頸椎数が減少した場合は胸椎数が増加していた。
また、頸椎数が特に多様なAnseriformes、Aequorlitornithesという二つのグループに着目し、頸椎の細長さの指標であるElongation Index(EI)を計測し、比較を行った。その結果、Anseriformesでは頸椎数に関わらずEIは同程度の値を示したが、Aequorlitornithesでは種によってEIの値が著しく異なっていた。これらの結果から、頸胸椎数になんらかの制限がある系統群では、各頸椎の伸長によって首を伸長している可能性が示唆された。次年度以降、さらに種数を増やして解析を行うことで、頸椎数の変化パターンと各頸椎の伸長パターンについて新たな知見が得られることが期待される。 また、本年度は、CTスキャンを用いた頸椎の三次元形態解析を行う予定であったが、購入予定であったソフトウェアの代理店契約が急遽終了し、ソフトウェアを選び直す必要が出たことから、購入予算を次年度に繰越し、三次元形態解析は延期となった。解析ソフトの検討の結果、当初購入を予定していたソフトが最も優れていると判断し、2年目の12月に本社から三次元形態解析ソフトウェアAmiraを購入し、解析を始めた。
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